氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
上 下
728 / 805
後日談

12

しおりを挟む
 リラとエドワルドが控え室に向かい、それに続いてエヴァンス家の者達が控え室へと向かう。

 この結婚式は王族の結婚式で、公務だから、喪中や病床の身で無い限り、爵位有る者達は参加する義務が有る。

 この義務を放棄する事は、当然不穏分子、謀反人や国賊と捉えられてもおかしくは無いのだ。

 伴侶や子息令嬢、婚約者は義務と言った強制力は無く、彼等を参列させる事は問題無いが、デビュー前の子供はマナーの点で連れて来る事は許されない。

 王族と公爵、他国の大使は一度各々の控え室に入り、他の貴族達は身分が低い者達から順に、参列席に向かい、全員が席に着席した後に声が掛かる。

 そして、他国の大使や公爵、王族が席に着いて式が始まる、と言うのが慣例なのだが、今回は少々事情が違った。

 そう。国王陛下と大司祭に依る怒りの断罪処遇の報告会と、説教と言う名の警告だ。

 そして今回、話題作りや好奇心、リラの悪評に惑わされた令息令嬢達が、リラを内心で嘲笑う為に、自ら進んで参加した事で、リラの本質と、王家の激怒っぷりを目の当たりにする事になる。

 そんな物怒りの報告会が有るとは知らないレオンは、アナスタシアがリラの控え室に向かうと聞き、自身も行きたいと言うのだが、それはアレクシスに却下された。


「レオン、お前には、王太子としての責務が有る。この後の報告会に参加して貰わなければならないからな。ジェフ、済まないがアナをエドワルド達の元へと案内し、ジーン殿を連れて来て欲しい」


 因みに、アレクシスがジェフを呼び捨てにしているのは、再会時にジェフから言われた為だ。

 ジェフはエヴァンス家の家名を名乗っては居るが、建前上で有り、本来姓は無い。

 エヴァンス家の血を引いては居るが、エヴァンス領の平民だから呼び捨てで結構です、と言い切られたのだ。

 それでもアレクシスは、こちらの都合で呼び出したのだからと反論をしようとした所、ジェフに、『王族に敬称を付けられるなんて真っ平です。媚びを売られているようで気色悪い』と、不敬罪と取られ兼ねない発言で、暗にエヴァンス家の役割を仄めかされ、呼び捨てで呼ぶ事になった、と言う経緯が有る。

 その為、アレクシスはジェフを呼び捨てにするが、ジェフ相手には命令と言うよりは、頼み事をする言葉を使う事が多く、周囲の者達は、二人は元々こういった間柄の学友関係だったのだろうと思い込んでしまったが、害の無い思い込みなので、ジェフは否定も肯定もせず、聞かれても、『それは今、仕事に関係の有る事ですか?』と、冷たい微笑みを浮かべたのだった。

 ジェフはアナスタシアをリラ達の控え室へと送り、リラとエドワルドに結婚の祝いの言葉を贈り、ジーンと共に王族の控え室に戻って報告会へと向かう。

 報告会は、アレクシス不在の王宮でアナスタシアを穢そうとし、捕縛された馬鹿者達の末路や、リラを貶めようと色々画策し、捕縛された者達の末路、詳細な計画内容と共に、捕まった実行犯の実名が公表され、教会の決定に依り、親族は家名や財産の継続、子孫の貴族籍の継承等を永久に奪われる事を知った。


「王の伴侶や婚約者、挙げ句、王太子に冤罪と言う罪を犯させようとしたのだ。当然だろう。本来で有れば生温い処置だ。だが、王族の婚姻と言うこの目出度い日に、血生臭い話は避けたい故の恩情だ。不服が有るなら後日申し立てろ。国民に公表の上、一家全員処刑してやる」


 アレクシスの本気の怒りを全身で感じ取った親族達は、当然ながら、後日に不服の申し立てをする者は一人も居なかった。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...