上 下
715 / 805
後日談

4

しおりを挟む
 月日は過ぎ、ステラとアシュリーは半月違いの男の子を無事に出産する。

 本来お産は男性が立ち合う事は無いとされるが、エヴァンス家のお産は代々旦那が立ち合い、奥方の手を握ったり汗を拭ったり、声を掛けたり腰を擦ったりと、傍で励まし続ける役目が有る。

 これは妻の苦しみや痛みを少しでも感じ理解する為と、子育てを妻だけに押し付けさせないと言う意思表示の為でも有るのだ。

 エドワルドもエヴァンス家の方針を聞き、リラのお産に立ち合っていた、とそんな話を聞いたアシュリーは、お産にジーンを立ち合わせるなんて、と戸惑っていたが、ジーンにどんな時でも一緒に居ると誓った約束を、違えさせないでほしいと言われ、更に、子供は二人の子だから、アーシュが頑張っている時も傍に居たいと懇願されて、頷く事しか出来なかったのだ。

 とは言え、ジーンがお産に立ち合い励まし続けてくれた為、アシュリーにとって心強く不安も少なかった。


「アーシュ、よく頑張ってくれたね。有難う」

「こちらこそ、ジーン様との子供を産ませて頂いて、有難う御座います。それに、こうして付き添って頂けて、とても心強く、とても頼もしかったです」


 アシュリーは汗だくになりながらも、とても嬉しそうに、幸せそうに笑う。

 因みにアシュリーとジーンの子供は、青みの強い銀髪と、アイスブルーの瞳で、色合いはジルギリスとリラと同じ色合いだった。

 
「この子がジーン様の次の、エヴァンス家侯爵になるのですね。男の子が産まれて良かったです。女の子だと、立場的にもこの家が狙われる事も有り得ますから」


 無いとは思うが娘しか産まれず、娘に辛い思いをさせたらどうしようと自身の経験から頭を過っていたので、産まれた子が男の子で本当に良かったと心底思っていたのだ。


「エヴァンス家の第一子に依る性別の出生確率は、九割以上が男児だよ。と言うか、ディーラン貴族の性別に依る出生確率自体、男児が多いからね。そもそも二代続けて第一子に女児が産まれているアーシュの所が珍しいぐらいだよ。元々ゴート家は、子供同士の争いを避ける為、一子しか作らないと決めていた家だろう?それをあの、婿養子で入った父親が破り、家の乗っ取りを企んだのだから、愚かにも程がある。だけどここはエヴァンス家だから、アーシュにはまだまだ子供を産んで貰うよ。エヴァンス家の場合、子供なら何人居ても良いし、子育てのスペシャリストも多いから、安心して子育てが出来るよ。女の子も欲しいから、長男がある程度成長したら、またここで、私の子供を育てようね」


 ジーンは妖艶な微笑みを見せ、出産を終えたアシュリーの腹部を労るように撫でたのだった。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて

木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。 前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...