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後日談

祝福の時 1

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 クルルフォーン家でエドワルドとリラの嫡男で有るリカルドが産まれ、赤子の可愛さにアシュリーは毎日でも顔を出したいとは思うものの、それはリラ達に迷惑だろうと思い、クルルフォーン邸に行く事を控えようとしたが、それはそれで寂しく思ってしまう自身に少し呆れていた。

 ジーンと出会う前からすれば、考えられない程の幸せを掴んだと言うのに、自分はいつからこんなにも貪欲になったのかと。

 喜ばしい事なのに、仲の良い義妹夫婦の子供の誕生を、少しだけ羨ましく思ってしまう心に、我儘だとすら思えてしまう。

 子供が出来るかどうかも、まだ分からないのにと。

 ジーンが帰宅をした後も、若干アシュリーが落ち込んでいると、アシュリーの心の機微を感じ取ったジーンが、夕食後の寝室にて二人切りになると、アシュリーを後ろから抱き寄せ、アシュリーに甘い声音で囁き掛ける。


「アーシュ、そろそろ避妊薬を止めようか」

「ジーン様?」

「本当はもっと長くアーシュを独り占めしたい所だけれど、リラ達の子供を見ていると、あまりの可愛さに、少し羨ましく思ってしまったんだ。リラ達の子供でもあれ程可愛いのだから、アーシュとの子供はもっと可愛く感じるだろうと思うしね。だからアーシュ。私との子供を一緒に育んでくれる?」


 まだ居もしないアシュリーのお腹を優しく撫で回し、ここで育むのだと仄めかす。

(ううっ。ジーン様には何もかも、お見通しのようです。わたくしが思っていた事なのに、ジーン様はわたくしを甘やかし過ぎです!)


「……うっ、嬉しいです、ジーン様……」


 瞳を潤ませ頷きながらも、何とか後ろを振り返り声を絞り出すアシュリーに、ジーンは妖艶な笑みを浮かべてアシュリーの唇を奪う。


「今まで以上にたっぷりと励んで、アーシュの中に沢山注いであげるから、アーシュは気負わず私の愛を、その身で存分に受け取れば良い。子供が出来ようと出来なかろうと、私の欲を受け止める事が出来るのは、アーシュ唯一人だけだから、それを忘れてはいけないよ?私の子供を身籠る事が出来るのは、アーシュ以外には誰も居ない。だから、存分に私だけを欲しがれば良い」


    そう言ってジーンは、アシュリーへの精神的な負担を減らしながら、その日から避妊薬を使わずに、言葉を違えず今まで以上にアシュリーとの行為にいそしんだ。

 それから数ヶ月が経ったある日。

 エヴァンス家の女医の診察を受けたアシュリーのお腹の中に、新しい命が宿っていた。

 因みに、アシュリーの体調の変化に逸早く気付いたのは、他でもないジーンだった。
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