707 / 805
後日談
9
しおりを挟む
レイニーは纏わり付く邸の侍女達に辟易していた。
着せ替え人形だと思っているのか、訪問先に失礼の無いように揃えてるドレスを持ってきて着せようとするし、貴族女性では普通と評される容姿を大げさに褒め称えるし、必要以上に構って来るので、とても鬱陶しくて仕方が無かった。
しかもその言葉の端々には、下心が満載だ。
「奥様、お着替えを手伝いますわ!」
「一人で出来るので結構です」
「旦那様におねだりしてはどうですか?奥様程可愛らしい方なら、着飾らせたいとお思いですよ!」
「会ったばかりの貴女に、ネイル様の何が分かると言うの?」
「お部屋のお掃除を致しますわ!」
「自分で出来ます」
「奥様はどんなドレスがお好きですか?宝石は?」
「あまり興味が有りません」
と、レイニーがバッサリと言い切っているにも拘わらず、侍女達は競うようにレイニーへと纏わり付き、媚びへつらいに来るのだ。
そして、男性使用人も、ご機嫌窺いとばかりによく話し掛けて来る。
レイニーにとっては、放って置いて欲しいのに。
前の領主の娘、サラがどういう態度で使用人達に接していたのかが、よく分かる状況だが、保身の為に来られても、レイニーが喜ぶ事は無い。
今まで真面な貴族に接していなかったのだから、仕方が無い事では有る。
レイニーがげんなりしていると、一人の侍女が話し掛けて来た。
「奥様、気分転換に外で身体を動かしませんか?」
「貴女はエヴァンス家の……」
「ハリエルと申します。この家に居る間は、専属侍女として奥様に付く事を許されましたので、これから宜しくお願い致します。邸に居た者達の対応はお任せ下さい。本来のゴート当主に仕えていた方々に、厳しく鍛え直して頂きますから」
ハリエルは黒い笑顔を浮かべるが、レイニーに対しての、悪意や媚びは一切感じないので、頼もしい限りだ。
「こちらこそ、宜しくお願いします!」
レイニーは満面の笑顔でハリエルに返事を返した。
そしてその後ハリエルは、レイニーと庭に出てダンから教わった護身術を披露したり、レイニーに絡もうとする者達に次々と仕事を振り分け、彼等の上司に当たる者達に報告し、指導改善を頼んだりした。
レイニーは、ハリエルの手際の良さに感動した程だ。
因みにエヴァンス家の使用人達は、元々が侯爵家の使用人なので、不当解雇されていた使用人達よりも身分は上の扱いをされている。
邸に居た使用人達にもハリエル達の正体を知らせ、本来の有能な仕事振りを目の前で見せ付ければ、誰からも文句は出なかった。
それはそうだろう。
エヴァンス家の使用人達は、実力主義のエキスパート達で、エヴァンス家の使用人と名乗れる者達は、当主に認められた者達なのだ。
その名を騙り、悪事を働こうものなら、秘密裏に捕縛され、当主の前に連れ出されて、この世の恐怖を味わうだろう。
勿論、悪事を働かなくても、エヴァンス家の使用人達からすれば、エヴァンス家や自身の誇りを貶されているような物だ。
見付け次第、それ相応の報復に出る事だろう。
そんな彼等が敬愛する、エヴァンス侯爵家子息の嫁となるアシュリーを蔑ろにしていた使用人達に対して、優しくしてやる義理は無い。
ハリエルは邸の使用人達にとって、レイニーの前に立ちはだかる強固な壁となった。
着せ替え人形だと思っているのか、訪問先に失礼の無いように揃えてるドレスを持ってきて着せようとするし、貴族女性では普通と評される容姿を大げさに褒め称えるし、必要以上に構って来るので、とても鬱陶しくて仕方が無かった。
しかもその言葉の端々には、下心が満載だ。
「奥様、お着替えを手伝いますわ!」
「一人で出来るので結構です」
「旦那様におねだりしてはどうですか?奥様程可愛らしい方なら、着飾らせたいとお思いですよ!」
「会ったばかりの貴女に、ネイル様の何が分かると言うの?」
「お部屋のお掃除を致しますわ!」
「自分で出来ます」
「奥様はどんなドレスがお好きですか?宝石は?」
「あまり興味が有りません」
と、レイニーがバッサリと言い切っているにも拘わらず、侍女達は競うようにレイニーへと纏わり付き、媚びへつらいに来るのだ。
そして、男性使用人も、ご機嫌窺いとばかりによく話し掛けて来る。
レイニーにとっては、放って置いて欲しいのに。
前の領主の娘、サラがどういう態度で使用人達に接していたのかが、よく分かる状況だが、保身の為に来られても、レイニーが喜ぶ事は無い。
今まで真面な貴族に接していなかったのだから、仕方が無い事では有る。
レイニーがげんなりしていると、一人の侍女が話し掛けて来た。
「奥様、気分転換に外で身体を動かしませんか?」
「貴女はエヴァンス家の……」
「ハリエルと申します。この家に居る間は、専属侍女として奥様に付く事を許されましたので、これから宜しくお願い致します。邸に居た者達の対応はお任せ下さい。本来のゴート当主に仕えていた方々に、厳しく鍛え直して頂きますから」
ハリエルは黒い笑顔を浮かべるが、レイニーに対しての、悪意や媚びは一切感じないので、頼もしい限りだ。
「こちらこそ、宜しくお願いします!」
レイニーは満面の笑顔でハリエルに返事を返した。
そしてその後ハリエルは、レイニーと庭に出てダンから教わった護身術を披露したり、レイニーに絡もうとする者達に次々と仕事を振り分け、彼等の上司に当たる者達に報告し、指導改善を頼んだりした。
レイニーは、ハリエルの手際の良さに感動した程だ。
因みにエヴァンス家の使用人達は、元々が侯爵家の使用人なので、不当解雇されていた使用人達よりも身分は上の扱いをされている。
邸に居た使用人達にもハリエル達の正体を知らせ、本来の有能な仕事振りを目の前で見せ付ければ、誰からも文句は出なかった。
それはそうだろう。
エヴァンス家の使用人達は、実力主義のエキスパート達で、エヴァンス家の使用人と名乗れる者達は、当主に認められた者達なのだ。
その名を騙り、悪事を働こうものなら、秘密裏に捕縛され、当主の前に連れ出されて、この世の恐怖を味わうだろう。
勿論、悪事を働かなくても、エヴァンス家の使用人達からすれば、エヴァンス家や自身の誇りを貶されているような物だ。
見付け次第、それ相応の報復に出る事だろう。
そんな彼等が敬愛する、エヴァンス侯爵家子息の嫁となるアシュリーを蔑ろにしていた使用人達に対して、優しくしてやる義理は無い。
ハリエルは邸の使用人達にとって、レイニーの前に立ちはだかる強固な壁となった。
1
お気に入りに追加
9,275
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる