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後日談
エヴァンス家の花嫁 1
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今日はエヴァンス家の次期当主で有るジーンの結婚式が王都で開かれる日だ。
アシュリーは、美しく仕上がったアシュリーの為だけの花嫁衣装を身に纏い、その装いにもっとも似合うメイクを施され、前日からエヴァンス家に滞在していたセイル家の家族にこれ以上無いと思える程の賛辞を貰い、恥ずかしさと嬉しさでほんのりと顔を赤く染め上げ感謝とお礼を述べるアシュリーに、感極まった義父のデュランが、この先ジーンが嫌になったら、いつでも私の所へ来ても良いのだからなと不穏な事を口にした為、リリーやローズに冷ややかな眼差しで説教されていたが、アシュリー的には緊張を解す為に言ってくれたのだと思われたのだろう、そんな事には絶対にならないと思いますが、お義父様のお気持ちは有り難く受け取らせて頂きます、と笑顔で答えていた。
そうしてアシュリーは花嫁が乗る為の馬車に乗り込み、大聖堂の前で待っているだろうジーンの元へと向かう。
大聖堂に向かう馬車の中で、アシュリーは祖父や実母が亡くなって以降の出来事を思い返していた。
父親が唐突に冷たい態度を取るようになった事。義母と義妹がゴートに入った事。サラや使用人達の振る舞い。そして、幼馴染みで有り、婚約者だったマディソンの事。
そして、家出し、エヴァンス家に連れて来て貰った事。ジーンとの出会い。リラやアナスタシアとの交流。ゴート家の家族達との決別。新たな優しい家族と使用人達。
特にこの一年の間、家族や幼馴染みの婚約者の裏切りから、新たな婚約者とその周囲に囲まれた楽しくも幸せな生活の日々を思い返す。
家族や幼馴染みの婚約者が裏切った事は辛かったけれど、それが有ったからこそジーンと出会う事が出来、今の幸せが有るのだと思っている。
だからこそ、この幸せを失いたくは無い。
(どうかこの先も、ジーン様と共に同じ時を歩けますように……)
馬車の中、手を組み合わせてアシュリーは祈る。
そうしていると、今まで感じていた微かな馬車の震動が止まり、出入り口で有る扉に目を向けると、その扉が開く。
アシュリーは組み合わせていた手を解くと、緊張からか震えそうになる足を何とか動かし、扉へと近付く。
扉の外に有る義父のデュランの手に手を重ね、慎重に馬車を降り、顔を上げると、目の前には花婿となるジーンが居た。
その姿は人と思えない程の美しさで、彼の隣に立っても引き立て役にすらならないのではないかと思ってしまうのだが、そんなアシュリーに、ジーンは甘く蕩けるような笑みを見せてくれる。
「ああ、今日と言う日をどれ程待ちわびた事か。アーシュ。私の最愛にして唯一の花嫁。とても綺麗だ」
「そうだろうそうだろう!私の可愛い義娘なのだからな!」
結婚式の雰囲気を打ち壊しそうな大声が響いたが、アシュリーはその声に少しだけ緊張が解れ、ジーンとデュークが放つ冷気の中、楽しそうに口元を綻ばせたのだった。
アシュリーは、美しく仕上がったアシュリーの為だけの花嫁衣装を身に纏い、その装いにもっとも似合うメイクを施され、前日からエヴァンス家に滞在していたセイル家の家族にこれ以上無いと思える程の賛辞を貰い、恥ずかしさと嬉しさでほんのりと顔を赤く染め上げ感謝とお礼を述べるアシュリーに、感極まった義父のデュランが、この先ジーンが嫌になったら、いつでも私の所へ来ても良いのだからなと不穏な事を口にした為、リリーやローズに冷ややかな眼差しで説教されていたが、アシュリー的には緊張を解す為に言ってくれたのだと思われたのだろう、そんな事には絶対にならないと思いますが、お義父様のお気持ちは有り難く受け取らせて頂きます、と笑顔で答えていた。
そうしてアシュリーは花嫁が乗る為の馬車に乗り込み、大聖堂の前で待っているだろうジーンの元へと向かう。
大聖堂に向かう馬車の中で、アシュリーは祖父や実母が亡くなって以降の出来事を思い返していた。
父親が唐突に冷たい態度を取るようになった事。義母と義妹がゴートに入った事。サラや使用人達の振る舞い。そして、幼馴染みで有り、婚約者だったマディソンの事。
そして、家出し、エヴァンス家に連れて来て貰った事。ジーンとの出会い。リラやアナスタシアとの交流。ゴート家の家族達との決別。新たな優しい家族と使用人達。
特にこの一年の間、家族や幼馴染みの婚約者の裏切りから、新たな婚約者とその周囲に囲まれた楽しくも幸せな生活の日々を思い返す。
家族や幼馴染みの婚約者が裏切った事は辛かったけれど、それが有ったからこそジーンと出会う事が出来、今の幸せが有るのだと思っている。
だからこそ、この幸せを失いたくは無い。
(どうかこの先も、ジーン様と共に同じ時を歩けますように……)
馬車の中、手を組み合わせてアシュリーは祈る。
そうしていると、今まで感じていた微かな馬車の震動が止まり、出入り口で有る扉に目を向けると、その扉が開く。
アシュリーは組み合わせていた手を解くと、緊張からか震えそうになる足を何とか動かし、扉へと近付く。
扉の外に有る義父のデュランの手に手を重ね、慎重に馬車を降り、顔を上げると、目の前には花婿となるジーンが居た。
その姿は人と思えない程の美しさで、彼の隣に立っても引き立て役にすらならないのではないかと思ってしまうのだが、そんなアシュリーに、ジーンは甘く蕩けるような笑みを見せてくれる。
「ああ、今日と言う日をどれ程待ちわびた事か。アーシュ。私の最愛にして唯一の花嫁。とても綺麗だ」
「そうだろうそうだろう!私の可愛い義娘なのだからな!」
結婚式の雰囲気を打ち壊しそうな大声が響いたが、アシュリーはその声に少しだけ緊張が解れ、ジーンとデュークが放つ冷気の中、楽しそうに口元を綻ばせたのだった。
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