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後日談

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「苦しい所は無いですか?」


 ウエディングドレスの仮縫いを試着しているアシュリーに、声を掛けるクレア。

    勿論クレアがアシュリーの為に作ったドレスだ。


「はい。クレアは凄いですね!既製品のドレスもそうでしたが、年越しのドレスもお披露目のドレスも、貴族女性の注目の的でした。わたくしがリラ様とシア様とのお揃いの装飾だなんて、畏れ多い事ですが、仲良しだと言って頂けて、とても幸せでした。クレアのお陰で、とても嬉しかったのです。こんなに素敵なドレスの数々を、わたくしにも作ってくれて有難うクレア」

「こちらこそ、これ程喜んで頂けると作った甲斐が有りますわ。けれどアーシュ様、そう何度も仰って頂かなくとも、ちゃんとアーシュ様のお気持ちは伝わっていますよ?」


 クレアがクスクスと笑えば、アシュリーは少し顔を赤らめながらも、素直に言葉を口にする。


「それでも、何度だろうと言いたくなってしまうのです。わたくし、エヴァンス家に来てからは嬉しい事ばかりで、時折夢ではないかと今でも思ってしまう程に、とても幸せなので。エヴァンス家の方々には感謝してもしきれませんわ」


 アシュリーの返答に、エヴァンス家の使用人達は内心悶えるばかりだ。

 貴族の者は、本来使用人達と食事を一緒に取る事は無い。

 だから本来、エヴァンス姓の者が居なければ、昼食はアシュリー一人で食べるのが当然の事なのだが、アシュリーはエヴァンス家に保護されるまで、ゴート家では殆どの食事を一人で取っている事が多かったので、王都に向かう道中、使用人達と一緒に食事を取り、簡素な食事だったにも拘わらず、賑やかで楽しいと、とても嬉しそうに食べていたのだ。

 そんな姿を見ていたステラは、エヴァンス家に着いて早々、ジーンにゴート家での食事事情……アシュリーが諦めきった顔で、一人寂しそうに冷めた食事を取らされていた事も告げれば、それを聞いたジーンはアシュリーが一人で食事する事が無いようにと、使用人達に通達を出したのだ。

 そんな裏事情が有ったとは知らずに、ジーンが居ない時には、ステラや他の使用人達と一緒に食事が出来、一人で食べる事が無くなり、食事が楽しくて仕方無いようだ。


「ドレスが入って良かったです。エヴァンス家に来てからは、食事がとても美味しいので、最近はついつい食べ過ぎていますから」

「アーシュ様、あれは食べ過ぎていると言う程の量では無いので、全然問題無いですよ。寧ろもっと食べて下さい。ドレスはある程度調整出来ますし、どちらかと言えばアーシュ様は細過ぎる方です。コルセットを着けなくても充分細身なんですから」

「そう、ですか?」

「「そうです。あまりに細いと、折れそうで恐いです」」


 クレアとステラが真剣な眼差しでアシュリーに言い切る。

 そう簡単には折れないと思うのだけれど?と思いながらも、アシュリーは心配を掛けるよりは良いかと素直に了承した。
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