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後日談

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 王都のエヴァンス邸を出て数日。

 旅は順調に進み、最初は緊張しまくっていたアシュリーも何とか落ち着き、セイル家の馬車に同乗させて貰っていた。

 その後の道中も、度々休憩を取り、人の往来の無い場所で、エヴァンス家の使用人達と手合わせをさせたり、ジーンやデューク、デュランが相手をしたりして、脳筋達の道中の鬱憤を晴らす。

 いつもと違う相手なので、気分転換になるようだ。

 ただし、道中勝手に暴走した者は、休憩時間の手合わせに参加させて貰えない上、護衛として役立たずだからと、帰りの道中で二回以上指示に従わなかった場合は、次回以降は違う任務、要は護衛の役を外すと脅して置く。

 その為、何事も無くエヴァンス領に入り、エヴァンス領の領都が見えた段階で気持ちが急き、スピードを上げようとしたので、ジーンが凍えるような良く通る声で忠告する。


「今ここで走り出した者は、指示に従わなかったとしてカウントするぞ?エヴァンス邸で一時解散するまでは、護衛の任務中だと思え。数日後に集まるまでは何をしても構わないが、出発時に体調管理が出来て居ない場合は問答無用で護衛の任務を外すからそのつもりでいろ。酔っ払いや筋肉痛で動けないなんて、言い訳にはならないからな」


 エレーナとデュークはセイル家の者が使用している館に数日間留まり、再び同じメンバーでセイル領を目指す。 

 アシュリーにセイル領を見せたいと言っていたデュランの要望を実現する為と、今現在デュークの代理として、セイル領内で政務を執り行っているデュランの妻を迎えに行く為でも有る。

 だからこそ、エヴァンス領の領都が見えた段階で、浮かれ出した脳筋達はジーンの声を聞き、一瞬にして冷静さを取り戻した。

 きっとその背には、大量の冷や汗が流れ落ちている事だろう。

 ジーンと手合わせしたセイル家の者達は、ジーンの実力を全く知らない者達だったので、ジーンを軽視し、物理的にも精神的にも、物凄く恐い目に合ったのだ。

 貴族だろうと細身だろうと、喩え相手が物凄く弱そうに見えようと、強い相手は物凄く強いし、見た目で判断すれば簡単に殺されてしまうと、その脳筋脳裏にも叩き込まれた事だろう。

(ジーン様、凄いです!従兄とは言え、他家の護衛にまで正しく指導が出来て、約束事を守らせるだなんて、さすがです!!)

 アシュリーは知らなかった。

 ジーンが手合わせの時に、アシュリーに見えない角度で、相手の急所を悉く寸止めし、何度も小声で挑発と脅しを口にしていた事を。

 アシュリーにとって、目新しい事だらけの道中は、セイル家の家族とも仲良くなれて、とても楽しい旅となった。
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