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後日談

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 ジーンが長い行列の中から、とある人物を遠くに見付けると、アシュリーにニッコリと微笑みを向ける。


「アーシュに会わせたい者が来てくれているようだ。陛下への挨拶が先だから、もう少し時間が掛かるだろうけど、楽しみにしていなさい」

「???どなたなのでしょうか?」

「それは会ってからのお楽しみ。まぁ、貴族なのに植物学者をしてると言う変わり者では有るけどね」

「植物学者、ですか???」


 ジーンは楽しみにしていなさいと言うが、アシュリーには何が何だか解らない。

 アシュリーはそれ程植物に詳しいと言う訳でも、詳しく調べたい訳でも無いからだ。


「ああ、彼と会うのは久し振りになるかな。彼は子供の頃に、エヴァンス領には植物学者その手の専門家達が平民の通う学校の教師をしていると聞いたらしく、学院を退学するからそっちの学校に通わせて下さいと言って来るわ、そこは貴族の通う所では無いからと断れば、それなら貴族を辞めますと言って来て、そのまま父親に離縁を迫り、困り果てた父親が私の所に来て、どうか息子を説得して下さいと泣き付いて来た事も有ったなぁ」


 ジルギリスの言葉に、アシュリーは吃驚するしか無い。

(平民の通う学校に通いたいからと、貴族を辞めようとした方がいらっしゃるなんて!!)

 普通、貴族になりたがる者は数多く居るが、その逆は殆どいない。

 それはそうだろう。

 平民の場合、生活の保証はその領主の考え方次第で左右されるし、一般的な平民は身の回りの事を全て自身で行い、人を雇う側では無く、人に雇われる側となるのだから。

 貴族が平民になるのは簡単だが、平民が貴族になるのはとても難しく、簡単に戻る事は出来ない。

 例外として唯一あるのは養子縁組ぐらいだろうが、貴族から平民になった者の大半は、何かしらの厄介事を抱えている為、殆どの貴族が縁組みをしたがらないのが普通だ。

 本来ならばアシュリーもそうなる筈だったが、あのジーンが、アシュリーを平民のままにして置く訳が無い。

 そんな事をすれば、他家がアシュリーを愛人として扱うのは目に見えているからだ。


「エヴァンス領の場合、完全実力主義だから、貴族でもたまにいるんだよ。虐げられた者や能力を正しく評価されない環境で育った者が、エヴァンス領は能力で評価されると聞き付け、雇ってくれと言い出す者達が。でも、他家の貴族を領内で住まわせて、今まで通り貴族として振る舞われても問題が起きるだけだから、貴族位を捨てる覚悟すら無い者に、平民の中で生活するなんて無理が有るから、貴族位を捨ててエヴァンス領に住まいを置くのは勿論、他の平民達と競い、その平民達よりも腕が上にならなければエヴァンス家では雇えない事を条件にする事が多いんだよ。そうまでしないとトラブルの元にしかならないだろうからねぇ」


 ジルギリスの説明に、アシュリーは王都に来る前にステラが言っていた、喩え若君が、結婚に乗り気なされなかった場合でも、エヴァンス領で預からせて頂きますと言っていた言葉を思い出し、その言葉の意味を理解した。
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