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後日談
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年越しまで後一時間程と言った頃、長蛇の列に並ばなくても良い立場の王弟で有るエドワルドがいる為、エドワルドが用意した特別席にアシュリーも招くが、未だにアシュリーにはエドワルドが王弟で有る事は言っていない。
そんな特等席で有る事も知らずに他の貴族達からの痛い程の視線を浴びている為、どうしても萎縮してしまうのだが、ジーンが軽くアシュリーを抱き寄せ、周囲に怯えさせるなと言った意味を含めた冷たい視線で周囲を一瞥すれば、その視線にビビった他の貴族達は然り気無く視線を外す。
だが、抱き寄せられたアシュリーにとってはそれ所では無い。
(近いです!人前です!見られてますよ、ジーン様!!)
突き放す訳にもいかず、アワアワと顔を真っ赤に染めているアシュリーは、魑魅魍魎の蔓延る場所では、何とも微笑ましい風景でしか無かった。
当然そんな姿を見せ付けられた独身貴族男性達は、羨ましそうにジーンを見ているが、ジーンは素知らぬ顔だ。
そんな時、遠くの入り口付近が何やら騒がしくなっている。
(ああ、来たか)
ジーンがそう思っていると、エドワルドが横に控える近衛騎士に一瞥を向け、その一瞥を向けられた者は、心得たとばかりに素早くその場を立ち去る。
そして、直ぐに戻って来て状況を説明する。
「ゴート家辺境伯と名乗る者が、令嬢とその婚約者を連れてお出でのようですが、陛下にお目通りをすると言い、近衛に最後尾に並ぶように言われて喚いています。その……何故伯爵位の自分達が最下位の後ろに並ばなければいけないのかと。自分達はエヴァンス家の子息に言われて来たのに、と言っていました」
「……まぁ、言ったな。王都の夜会に出れば良いと。ただ、どう足掻いても無駄だろうとも言った筈だが」
ジーンの周辺温度が一気に下がる。
まぁ、ジーンが好意的で言ったとは、誰一人として思って居ないが。
何せジーン本人が、婚約者の元実家の家族達は、最低の屑だったと公言していたのだ。そのジーンが張本人で有るゴート家の元家族達に好意的に接している訳が無い。
だからこそ、自分の名前を勝手に出されて、いい気分等しないのは当然の事だ。
「……その愚か者達を、そこに連れて来い」
エドワルドが場所を指差しそう言うと、近衛騎士は困惑した顔をして切り出す。
「その……あまり近寄らせない方が宜しいかと。あの三人は物凄く酷い悪臭を辺りに漂わせて居られるので、既に近くに居合わせた数人の方々が、気分が悪いと仰っていたぐらいですし、実際かなりの悪臭です」
ジーンから悪臭を放っているかも知れないと事前に告げられていた為、王宮勤務の者達には、一応鼻と口を覆える分厚いスカーフや布を持ち歩くよう、通達を出している。
とは言え、理由は話していないので、皆不思議がってはいたが。
「通達を出していただろう。大きめの布を持ち歩けと。その布で鼻と口を覆い、捕縛した状態で声の届く範囲のその辺り、悪臭が外へと流れ易い場所に立たせろ。決して国王夫妻や、ここに居る方々には近付けさせるな」
エドワルドが周囲に居る他の近衛騎士達にも視線を向けると、腕や首に巻いていた布の使い道を理解した近衛騎士達が、顔半分を布で覆い、迅速に三人を後ろ手に縛り上げて、エドワルドの指示通り、悪臭が外に流れ易い場所へと連れて来る。
「ちょっと!何するのよ!!放しなさい!放しなさいってば!!」
身体に染み込んだすえた臭いと、それを消そうと振り掛けたのだろう香水の甘ったるい臭いが混ざり合い、歩く公害と化してるのにも気付かずに、サラは捕らえられた事に怒り狂っていた。
そんな特等席で有る事も知らずに他の貴族達からの痛い程の視線を浴びている為、どうしても萎縮してしまうのだが、ジーンが軽くアシュリーを抱き寄せ、周囲に怯えさせるなと言った意味を含めた冷たい視線で周囲を一瞥すれば、その視線にビビった他の貴族達は然り気無く視線を外す。
だが、抱き寄せられたアシュリーにとってはそれ所では無い。
(近いです!人前です!見られてますよ、ジーン様!!)
突き放す訳にもいかず、アワアワと顔を真っ赤に染めているアシュリーは、魑魅魍魎の蔓延る場所では、何とも微笑ましい風景でしか無かった。
当然そんな姿を見せ付けられた独身貴族男性達は、羨ましそうにジーンを見ているが、ジーンは素知らぬ顔だ。
そんな時、遠くの入り口付近が何やら騒がしくなっている。
(ああ、来たか)
ジーンがそう思っていると、エドワルドが横に控える近衛騎士に一瞥を向け、その一瞥を向けられた者は、心得たとばかりに素早くその場を立ち去る。
そして、直ぐに戻って来て状況を説明する。
「ゴート家辺境伯と名乗る者が、令嬢とその婚約者を連れてお出でのようですが、陛下にお目通りをすると言い、近衛に最後尾に並ぶように言われて喚いています。その……何故伯爵位の自分達が最下位の後ろに並ばなければいけないのかと。自分達はエヴァンス家の子息に言われて来たのに、と言っていました」
「……まぁ、言ったな。王都の夜会に出れば良いと。ただ、どう足掻いても無駄だろうとも言った筈だが」
ジーンの周辺温度が一気に下がる。
まぁ、ジーンが好意的で言ったとは、誰一人として思って居ないが。
何せジーン本人が、婚約者の元実家の家族達は、最低の屑だったと公言していたのだ。そのジーンが張本人で有るゴート家の元家族達に好意的に接している訳が無い。
だからこそ、自分の名前を勝手に出されて、いい気分等しないのは当然の事だ。
「……その愚か者達を、そこに連れて来い」
エドワルドが場所を指差しそう言うと、近衛騎士は困惑した顔をして切り出す。
「その……あまり近寄らせない方が宜しいかと。あの三人は物凄く酷い悪臭を辺りに漂わせて居られるので、既に近くに居合わせた数人の方々が、気分が悪いと仰っていたぐらいですし、実際かなりの悪臭です」
ジーンから悪臭を放っているかも知れないと事前に告げられていた為、王宮勤務の者達には、一応鼻と口を覆える分厚いスカーフや布を持ち歩くよう、通達を出している。
とは言え、理由は話していないので、皆不思議がってはいたが。
「通達を出していただろう。大きめの布を持ち歩けと。その布で鼻と口を覆い、捕縛した状態で声の届く範囲のその辺り、悪臭が外へと流れ易い場所に立たせろ。決して国王夫妻や、ここに居る方々には近付けさせるな」
エドワルドが周囲に居る他の近衛騎士達にも視線を向けると、腕や首に巻いていた布の使い道を理解した近衛騎士達が、顔半分を布で覆い、迅速に三人を後ろ手に縛り上げて、エドワルドの指示通り、悪臭が外に流れ易い場所へと連れて来る。
「ちょっと!何するのよ!!放しなさい!放しなさいってば!!」
身体に染み込んだすえた臭いと、それを消そうと振り掛けたのだろう香水の甘ったるい臭いが混ざり合い、歩く公害と化してるのにも気付かずに、サラは捕らえられた事に怒り狂っていた。
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