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後日談

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「おっ……お言葉ですが、私は騙されていただけです。それなのに、破棄も離縁も出来ず、多額の借金が有る平民にだなんて酷過ぎます!」

「騙されていたからどうだと言うのだ。お前に罪は無いとでも言いたいのか?アシュリー嬢の場合、花嫁候補を探していた私の使用人達の目に留まったから、保護する事が出来ただけで、本来お前は罪の無い真っ当な女性を修道院に送り込み、貴族の生活を終わらせる事になっていたんだぞ。継ぐべき血筋を絶やし、その家を乗っとり、騙されていたから罪が無い?それでは王家に同じ事が起きても、お前は相手を無罪放免にするつもりか?」


 ジーンが絶対零度の眼差しで、マディソンにそう問い掛ければ、マディソンは何も言えなくなる。


「そもそもアシュリー嬢が家を出たのは、家に留まった所で、金目当ての縁談を組まされる可能性が高いからだ。金を持っているなら、年寄りだろうが既婚者だろうがお構い無しに売りそうだからな。私ですらそう思うのだ。当事者で有るアシュリー嬢が思わない訳が無いだろう。この父娘にとって、アシュリー嬢は邪魔な存在でしか無い。そんな父娘の言葉をお前は鵜呑みにし、アシュリー嬢を捨てたのだから、アシュリー嬢に刺されても文句は言えないし、お前は文句を言う立場では無い。ゴート家は既に潰れている。只の繋ぎでしか無いと言うのに、そこの馬鹿男が、正統な血筋のアシュリー嬢を、ゴート家から外したのだからな」


 ジーンはダミアンを一瞥すれば、先程ジーンに腕を捻り上げられた事を思い出してか、ビクッと大きく震えていたので、小者がと思いながら、ジーンは再度マディソンに視線を向ける。


「お前の落ち度は、自分で何も調べなかった事だ。そこの男が婿養子だと言う事は、歳の近いお前の父親ならば、当然知っている筈だし、ゴート領の領民に聞けば直ぐに判明した事だ。騙されたとお前は言うが、貴族社会は駆け引きの場で有り、時に騙し合いになる事も有る。そんな事も知らずに、よく今まで何事も無く生きて来れたな。まぁ、お前の皺寄せは全てアシュリー嬢に行っていたのだろうが、よくそこまで愚鈍になれた物だ。そんなお前には、そこに居る馬鹿女がお似合いだろう。アシュリー嬢がどれ程良い女だったか、この先思い知ると良い」


 矛先が自分に戻ると、サラはジーンに対してヒステリックな声を上げる。


「さっきから馬鹿女馬鹿女って、わたしは馬鹿女って名前じゃないわよっ!!こんなの認めない!認めないんだからぁっっ!!!」

「だから馬鹿だと言うのだろうが。何故私がお前の名を呼ばなければならない。そんなに不満ならば、王都に行き、国王陛下に直談判すれば良い。と言っても、一介の地方令嬢がそう易々とお目に掛かれる相手では無い。だが、近々王家主催の夜会が開かれる予定だから、それに参加すれば良い。ただし、費用は自腹だし、陛下がお前の言葉を聞き入れる事は無いだろう。それでも良いのなら貴族最後の見納めとして、王都の夜会に出れば良い。地方令嬢のお前がどこまでやれるのか見てやろうじゃないか。まぁ、どう足掻いても無駄だろうがな」


 分かり易いジーンの挑発に、サラは見返してやると息巻いたので、ジーンは王都の夜会の日程を教えてやると、直ぐにでも用意に取り掛からないと間に合わない事を知り、父親とマディソンを引っ張り退場して行ったのだった。
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