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後日談
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「そもそも、婚約者を捨てさせたと言うが、本来で有れば、その婚約者がアシュリー嬢の心の変化に気付けない事の方がおかしいし、婚約者ならば、心を尽くして接するべきだ。他の女性と同じような対応をし、不安にさせる事自体、男としてどうかと思うし、彼女の価値を知る他の男が彼女に愛を囁き、取られたとしても、男の行いからすれば、仕方無い事だと思うが?」
ジーンとしては婚約者のいる女性に手を出す気は無かったし、マディソンがアシュリーを切り捨てさえしなければ、今もアシュリーはマディソンと共にいただろう。
だが、現実はあの男からアシュリーに婚約の解消を申し出たのだ。
アシュリーにとっては破棄されたも同然の解消話。
あの男がサラを選びさえしなければ、アシュリーはずっと、あの男を支えていたと言うのにだ。
もし、マディソンがアシュリーと結婚していたなら、きっとマディソンのアシュリーを見る目が変わっていただろう。
そして勿論サラや、あの父親との齟齬に気付き、アシュリーを守る事も、当然出来た筈だ。
まぁ、それも今更で有り、実現不可の仮定話で有る為、アシュリーがマディソンの元に帰る事は決して無いが。
「ああ、言い忘れていたが、一応警告だけはして置いてやる。金輪際、私とアシュリー嬢には関わるな。近付く事は勿論、手紙や知人を介しての接触も禁じる。もしも警告を守らないようで有れば、貴族社会から抹消してやる。出来ないなんて思うなよ?お前達の住む領地を全て買い取っても、エヴァンス家の潤沢な資金に、支障は一切無いからな」
エヴァンス家のエヴァンス領は、ここ、ディーランから独立し、鎖国をしても全く問題にならない程の資金や基盤となる体制の土台が有る。
どちらかと言えば、そんな事をされて困るのはディーラン王国の方だろう。
エヴァンス家は王家よりも王国内の内情により詳しく、抱える使用人や領民達は能力の優れた者達ばかりだ。
共存共栄ならば良いが、敵対や疎遠は頂けない。
只でさえ平和惚けした花畑や、毒虫となる害虫が多いのだ。
それを裏で清掃し、より良い国作りを手伝ってくれるエヴァンス家に切り捨てられては堪った物では無いだろう。
それをされるぐらいならば、一地方等切り捨てた所で惜しくは無い。
エヴァンス家は家臣で有ると同時に、国王と対等な立場に有る、見張り役の家柄なのだから。
「勿論そんな生易しい事をしてやる義理も無いから、私はただ、商人達の耳に入るようにしてやれば良いだけだ。お前達の家名とエヴァンス家が敵視している事を。エヴァンス家の不興を買いたく無ければ、その領地には関わるなと。知っているか?商人達の出入りしなくなった領地がどうなるか。余程の体制基盤が無ければ物流が途絶え、物価が上がり、生活が苦しくなる。領民の不満は領主に向き、その内反乱が起きても不思議では無いな。そうなればどうなるか。愚かで馬鹿なお前達でも解る事だろう?」
ジーンは黒い笑みを浮かべ、女性達を一瞥する。
アシュリーを利用しようと近付いて来た女達は皆、顔を土気色に変えて、漸くジーンが敵に回してはいけない相手だったのだと遅れ馳せながらも認識し、ガタガタと震え上がるのだった。
ジーンとしては婚約者のいる女性に手を出す気は無かったし、マディソンがアシュリーを切り捨てさえしなければ、今もアシュリーはマディソンと共にいただろう。
だが、現実はあの男からアシュリーに婚約の解消を申し出たのだ。
アシュリーにとっては破棄されたも同然の解消話。
あの男がサラを選びさえしなければ、アシュリーはずっと、あの男を支えていたと言うのにだ。
もし、マディソンがアシュリーと結婚していたなら、きっとマディソンのアシュリーを見る目が変わっていただろう。
そして勿論サラや、あの父親との齟齬に気付き、アシュリーを守る事も、当然出来た筈だ。
まぁ、それも今更で有り、実現不可の仮定話で有る為、アシュリーがマディソンの元に帰る事は決して無いが。
「ああ、言い忘れていたが、一応警告だけはして置いてやる。金輪際、私とアシュリー嬢には関わるな。近付く事は勿論、手紙や知人を介しての接触も禁じる。もしも警告を守らないようで有れば、貴族社会から抹消してやる。出来ないなんて思うなよ?お前達の住む領地を全て買い取っても、エヴァンス家の潤沢な資金に、支障は一切無いからな」
エヴァンス家のエヴァンス領は、ここ、ディーランから独立し、鎖国をしても全く問題にならない程の資金や基盤となる体制の土台が有る。
どちらかと言えば、そんな事をされて困るのはディーラン王国の方だろう。
エヴァンス家は王家よりも王国内の内情により詳しく、抱える使用人や領民達は能力の優れた者達ばかりだ。
共存共栄ならば良いが、敵対や疎遠は頂けない。
只でさえ平和惚けした花畑や、毒虫となる害虫が多いのだ。
それを裏で清掃し、より良い国作りを手伝ってくれるエヴァンス家に切り捨てられては堪った物では無いだろう。
それをされるぐらいならば、一地方等切り捨てた所で惜しくは無い。
エヴァンス家は家臣で有ると同時に、国王と対等な立場に有る、見張り役の家柄なのだから。
「勿論そんな生易しい事をしてやる義理も無いから、私はただ、商人達の耳に入るようにしてやれば良いだけだ。お前達の家名とエヴァンス家が敵視している事を。エヴァンス家の不興を買いたく無ければ、その領地には関わるなと。知っているか?商人達の出入りしなくなった領地がどうなるか。余程の体制基盤が無ければ物流が途絶え、物価が上がり、生活が苦しくなる。領民の不満は領主に向き、その内反乱が起きても不思議では無いな。そうなればどうなるか。愚かで馬鹿なお前達でも解る事だろう?」
ジーンは黒い笑みを浮かべ、女性達を一瞥する。
アシュリーを利用しようと近付いて来た女達は皆、顔を土気色に変えて、漸くジーンが敵に回してはいけない相手だったのだと遅れ馳せながらも認識し、ガタガタと震え上がるのだった。
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