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後日談

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「部屋は、同室……と言いたい所だけれど、私達はまだ、王都でも正式な婚約発表をしていないからね。ただし、そうは言っても、国王陛下夫妻には既に話は通して有るし、勿論、結婚許可証も貰っているからね。本来、結婚する両家の願書が必要だけど、アシュリー嬢は事情が事情だから、特例として頂けたよ」


 それは、国王陛下がアシュリーとジーンの結婚を認めたと言う証。

 それを聞いたアシュリーは、このまま実家に戻る事無く、ジーンと一緒に王都の、あのエヴァンス家に帰れるのだと確約を貰えたようなものなので、とても嬉しい事だと捉えていた。

 ジーンはサラッと言ったが、本来結婚許可証は、それ程簡単に貰える物では無い。

 王家に害を為そうとする家が、婚姻で力を付け無いとは言い切れないからだ。

 危険分子は一通り目を付けているものの、一応精査する為時間が掛かる。

 ジーンはアレクシスと直接話せる立場にいる上に、信頼の厚い家だからこそ、これ程難無く入手出来るのだ。

 当然、結婚許可証は国王が結婚を許可したと言う物なのだから、それを覆す事は、王の意に反する事と捉えられてもおかしくない。

 その為、アシュリーの実家が今更何かを言った所で、覆しようが無いのだ。

 結婚許可証が有るとも知らずに、そのまま過ごしていられると思っていられるのも、今の内だけだろう。


「後は、貴女を蔑ろにした貴女の家族と元婚約者を、貴女から綺麗に切り離しましょう。元々あちらが最初に貴女を捨てたのだから、喩えどんな事になろうとも、貴女が気にやむ必要は有りませんからね」

「はい。有難う御座います、ジーン様」


 アシュリーはジーンが気遣ってくれているのだと思い、胸が熱くなるような想いを抱きながら、ジーンへと微笑んだ。

 因みに、ジーンの言葉を聞いていたレッグスと子爵は、ゴート家と深い親交が無くて、本っ当に良かったと、心底安堵したのは言うまでもない。


「お部屋は寝室だけが別に有る、家族用の貴賓室を用意しました。夫婦用では無いので、それで体裁は守られるかと。結婚許可証が有るのならば、尚更何の問題も無いでしょう。エヴァンス家子息のジーン殿の未来の奥方に、何か有ってからでは遅いですからね。予定通り、夜会は明日の夕方から開く事になっています。滞在中は、ここを我が家と思って、ごゆっくりお寛ぎ下さい」


 子爵はそう言い、使用人達に合図を送り、ジーン達の荷物を貴賓室へと運ばせる。

 勿論不手際が無いように、エヴァンス家の使用人達もその後を付いて行く。

    そうしてその日はゆっくりと休み、翌日の夜会に備えるのであった。
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