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後日談

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 アシュリーがクルルフォーン邸へとお茶会に行く当日、ジーンは職場に向かう時間帯を調整し、アシュリーをクルルフォーン邸に送ってから王宮へと向かう。

 アシュリーをクルルフォーン邸の応接室まで付き添うと、ジーンはアシュリーに注意した。


「帰りも迎えに来ますので、それまでリラと一緒にここで過ごして下さいね。一人で家に帰ってはいけませんよ?エヴァンス家に賓客が滞在していると言ってはいますが、好奇心旺盛な者がエヴァンス家の馬車を止める事が、この先無いとは限りませんからね」


 実際、エヴァンス邸からクルルフォーン邸へと向かう際、普段は居ない時間帯だからと声を掛けて来た者が居たのだ。

 ジーン殿に会わせろと横柄な態度で馬車を止め、少しした後、名指しされたジーンが中から出れば、慌ててどうでもいい話や仕事に関する他愛の無い話で誤魔化そうとしていたが、顔を見せないだなんて、無礼だ何だと言い募り、中の人間がどのような相手かを確認しようとしていた事は丸解りだった。

 勿論そんな相手に、無礼なのはどちらだ?そんな下らない話の為だけに、エヴァンス家の馬車を止めさせたのか?と冷たい眼差しで言い、真っ青になった相手に、書面で正式に抗議させて貰うと言い置いたのだ。

 馬車を止めさせるなんて、通常では有り得ない。用事が有るのならば、約束を取り付けるのが貴族の鉄則だからだ。

 緊急事態で有れば話は別だが、相手の話は明らかに緊急性を欠いていた。

 そんな相手に、ジーンが温情を掛けてやる義理は無い。

 ジーンはアシュリーをお披露目まで他人の前に晒す気は無いのだから。


「私に貴女を守らせる権利を、取り上げないで下さいね?」


 ジーンはアシュリーに甘く囁き、アシュリーは顔を真っ赤に染めて、コクコクと頷く姿を満足気に確認し、アシュリーの手の甲に口付けを落として、名残惜しいけど、そろそろ仕事に行って来ますねと言い、その場を去った。

 後に残されたアシュリーは、リラが来るまでジーンの後ろ姿が消えた扉を見詰めていた。


「遅れて申し訳御座いません、アーシュお義姉様。シアお義姉様は少し遅れるかも知れませんが、楽しみにしているとのお返事を下さいましたわ♪……アーシュお義姉様?」


 ハッと我に返ったアシュリーは、何でも無いですとリラに言うが、リラが心配そうな顔で見てくるので、アシュリーは頬をほんのりと赤く染めながら、リラに言う。


「ジーン様は本当に素敵な方なので、夢を見ているような気分になってしまっただけですわ。わたくし、ジーン様やリラ様と出会えて、今がとても幸せです。こんなにも良くして頂けるだなんて、思ってもいませんでしたもの。ジーン様やリラ様と出会えて、とても優しくして頂けて、とても嬉しいですわ」


 自慢の兄が誉められて喜ばしいのと、ジーンだけで無くリラも含んでの幸せ発言に、リラは心底嬉しくなったのだった。
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