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後日談

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「そっ……その割りには、物凄く自然な感じで、言い慣れているように聴こえます」

「言い慣れてはいないけれど、私の周りには恋人や伴侶を大切にしている者達ばかりなので、その影響が大きいだけですよ。私の両親も祖父母も、未だに新婚夫婦と呼べる程に仲が良いですし、使用人達も誠実で、恋人や伴侶以外に手を出すような輩は一人も居ません。万が一、恋人や伴侶がいる状況で他の異性に手をだそうものなら、解雇処分になりますからね。主人や主人の奥方に横恋慕するような可能性の有る者等、家に置いて置けませんから。そんな環境ですので、言い慣れてはいませんが、見聞きし慣れているだけです。エヴァンス家ウチは政略だろうと恋愛だろうと、結婚すると決めた相手とだけ添い遂げ、宝として大事にすると言う家訓の元で育っているので、対象者以外には期待を持たせないようにしていますから」


 ジーンの言葉が事実なら、妾を持たれる事も無く、アシュリーはずっとジーンの隣にいる事が出来る。

 そう思うと、胸の奥が温かくなるようだが、アシュリーにはどうしても聞いておきたい懸念が有る。

 喩え健康で有っても、子供が出来ない場合や、子が流れて産めない身体になる事も有るからだ。


「ですが……子供が産まれなければ、家の後継ぎが居なくなってしまいます。その場合、愛人や妾が必要ですよ?」

「そんな者は必要有りませんよ。万が一子が出来ない場合は、血縁の有る者の中から養子を貰いますから。ただし、妹の子は公爵家の子供なので、養子に貰う事は出来ませんが、他の血縁者なら問題有りません。エヴァンス家の特徴を継ぐ者に継いで貰えれば良いだけですよ。ウチは代々、そういった考えの者達なので、愛人や妾が居た事は有りませんし、離縁する事も有りません。だから、貴女はここで、安心して過ごして下さい」


 ジーンはアシュリーが家から追い出される、と言う可能性を捨て切れていないだろう事に、離縁する事は無いと否定する。

 そもそもジーンは、アシュリーを逃がす気は無いのだから、アシュリーの逃げ道は完全に塞ぐ気でいるのだ。

(こんなに素直で可愛い女性を、逃がすなんて有り得ない。彼女の元婚約者はどうしようもない馬鹿だな。誠実で勤勉な彼女よりも、見掛けだけの、何も持たない義妹が良いなんて。そもそも、正統な後継者を追い出して、ゴート家の血を全く引いていない義妹が継げると思ってる事自体が間違いなんだけど……。父親は婿養子なのに、領主の仕事もしていないなんて、怠慢でしかない。それに、相続権は父親では無く、ゴート家の血を引く者、詰まりはアシュリー嬢に領地の相続権が有るけど、アシュリー嬢が放棄した場合は、国に返上する事になってるのを知らないのかなぁ?エヴァンス家には必要の無い土地だから、アシュリー嬢に権利を放棄して貰うつもりだけど、無能な親族が継ぐよりも、有能な貴族に渡る方が需要も有るし、領民も安心して暮らせるよね)

 ジーンはアシュリーに微笑みながら、そんな事を思っていたのだった。
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