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後日談
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王都への旅路は何事も無く進み、王都の手前の街で馬車を乗り換える。
その際、アシュリーは侍女に豪華なドレスを着付けられ、華やかなメイクを施される事になった。
「わたくしに、こんな豪華で綺麗なドレスが似合うでしょうか……」
ドレスを見て、不安げな顔をするアシュリーに、にっこりと笑顔で答える侍女。
「アシュリーお嬢様は厚塗りせずとも、化粧の仕方でどんなドレスでも着こなせるタイプだと思われますよ?今度アシュリーお嬢様の元婚約者様にお会いする時は、必ずあの男に後悔させてやりますわ。貴方の元婚約者はとても美しいでしょう、と♪アシュリーお嬢様は誠実さと実直さが表に出易いので、シックな物だと地味に見え易いだけで、少し工夫をすれば、王都の美女と呼ばれるお嬢様方と充分張り合えます。そんなアシュリーお嬢様を手離し、そこそこの見た目と悪知恵だけが働くサラお嬢様を選ぶなんて、見る目の無い男です。駄犬に咬まれたと思った方が良いですよ」
「ステラにとって、サラはそこそこなのですか?」
キョトンとするアシュリーに、変わらぬ笑顔で頷く侍女のステラ。
「ええ。あれぐらいならそこそこですし、それ以前に減点だらけですけどね。アシュリーお嬢様はお気付きになられていませんでしたが、あれは相当強かな雌狐です」
そんな返答を聞いて、アシュリーは笑みを漏らす。
「フフフッ。あの子の事をそんな風に言う人なんて、貴女ぐらいだわ。わたくしの周囲にいた者達は、皆、あの子が一番だと思っているもの」
「それはその方達の目が肥えていないだけですよ。あれ程度、世の中にはゴロゴロいますから。もしくは機嫌を損ねない為の世辞ですね。通常使用人の場合、事実を口にして主人の機嫌を損ね、八つ当たりを受けたり、解雇になんてされたくないですから。穏便に済ませられるのなら、心の内ではどう思っていようと、従順でいた方が楽ですからね。ただし、エヴァンス家内では通用しませんよ。従順だなんて、聞こえは良いかも知れませんが、要は思考を放棄してるだけですから。そんな向上心や成長力の欠片も無い使用人なんて、エヴァンス家には必要有りません。他家では従順に装っている事は有りますが、それが苦痛になる時も有りますからね」
何せあのサラにも、エヴァンス家の使用人で有る侍女が付いているのだ。
あれの機嫌を取る為に、世辞を振り撒き有能さをひた隠す。
後に控えるざまぁが無くては、やさぐれたくなる事だろう。
「私はアシュリーお嬢様の侍女で、心底良かったと思いますわ」
そんな事をにっこり笑顔で言いながら、ステラは手際良くアシュリーの身支度を整え、エヴァンス家の紋章入りの馬車へとアシュリーを連れて乗り込んだのであった。
その際、アシュリーは侍女に豪華なドレスを着付けられ、華やかなメイクを施される事になった。
「わたくしに、こんな豪華で綺麗なドレスが似合うでしょうか……」
ドレスを見て、不安げな顔をするアシュリーに、にっこりと笑顔で答える侍女。
「アシュリーお嬢様は厚塗りせずとも、化粧の仕方でどんなドレスでも着こなせるタイプだと思われますよ?今度アシュリーお嬢様の元婚約者様にお会いする時は、必ずあの男に後悔させてやりますわ。貴方の元婚約者はとても美しいでしょう、と♪アシュリーお嬢様は誠実さと実直さが表に出易いので、シックな物だと地味に見え易いだけで、少し工夫をすれば、王都の美女と呼ばれるお嬢様方と充分張り合えます。そんなアシュリーお嬢様を手離し、そこそこの見た目と悪知恵だけが働くサラお嬢様を選ぶなんて、見る目の無い男です。駄犬に咬まれたと思った方が良いですよ」
「ステラにとって、サラはそこそこなのですか?」
キョトンとするアシュリーに、変わらぬ笑顔で頷く侍女のステラ。
「ええ。あれぐらいならそこそこですし、それ以前に減点だらけですけどね。アシュリーお嬢様はお気付きになられていませんでしたが、あれは相当強かな雌狐です」
そんな返答を聞いて、アシュリーは笑みを漏らす。
「フフフッ。あの子の事をそんな風に言う人なんて、貴女ぐらいだわ。わたくしの周囲にいた者達は、皆、あの子が一番だと思っているもの」
「それはその方達の目が肥えていないだけですよ。あれ程度、世の中にはゴロゴロいますから。もしくは機嫌を損ねない為の世辞ですね。通常使用人の場合、事実を口にして主人の機嫌を損ね、八つ当たりを受けたり、解雇になんてされたくないですから。穏便に済ませられるのなら、心の内ではどう思っていようと、従順でいた方が楽ですからね。ただし、エヴァンス家内では通用しませんよ。従順だなんて、聞こえは良いかも知れませんが、要は思考を放棄してるだけですから。そんな向上心や成長力の欠片も無い使用人なんて、エヴァンス家には必要有りません。他家では従順に装っている事は有りますが、それが苦痛になる時も有りますからね」
何せあのサラにも、エヴァンス家の使用人で有る侍女が付いているのだ。
あれの機嫌を取る為に、世辞を振り撒き有能さをひた隠す。
後に控えるざまぁが無くては、やさぐれたくなる事だろう。
「私はアシュリーお嬢様の侍女で、心底良かったと思いますわ」
そんな事をにっこり笑顔で言いながら、ステラは手際良くアシュリーの身支度を整え、エヴァンス家の紋章入りの馬車へとアシュリーを連れて乗り込んだのであった。
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