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後日談

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 女傭兵の部屋に通して貰うと、女傭兵はぶちぶちと文句を言っていた。


「全く!何であたしが、こんな部屋に閉じ込められなきゃなんない訳?!あのダンが貴族関係者と親密になるなんて、誰が想像してると思うのよ!権力なんて興味無いとか言ってた癖に、とんだ嘘吐きだわ!本っ当に信じられないっ!」


 利用出来るなら利用するが、権力が欲しくて貴族に近付いた訳でも無いと言う事を理解していないのだろう女は、ダンに対する愚痴を吐いていた。


「信じらんねぇのはお前の方だろ。ダンは権力になんざ興味ねぇよ。単に気に入った相手が貴族や貴族関係者だってだけだ。あいつは昔と変わっちゃいねぇよ」


 女傭兵の独り言にマッドが冷めた声で突っ込むと、女傭兵は扉の方を睨み付けるように振り向いた。

「誰?!こんな所に閉じ込めて置いて、出す気が無いなら勝手に人の部屋に入って来ないでよ!!……って、マッド?」


 ダン同様懐かしい顔を見て、最初の険しい表情はどこへやら。

 女傭兵は上機嫌な笑みを見せ、マッドに話し掛ける。


「久し振りね、マッド!ちょっと聞いて頂戴!!酷いのよ、皆!あたしはなんにもしてないのに、あたしをこんな所に閉じ込めて、あたしの自由を奪うのよ?!本当、嫌になっちゃう!あたしは被害者よ!マッドからもそう言って頂戴!」

「被害者はこっちだっつうの。何がなんもしてねぇだ?ダンの嫁さんに暴言吐いといて、よくそんな事が言えんなぁ。俺ぁ今、ダンと同じ職場に居るが、ダンの嫁さんはどう見ても花売りのタイプには見えんだろうが。お前の目ぇ腐ってんだろ。俺ぁダンから事情を聞いてんだ。お前の味方になると思うなよ?」

「なっ!」

「そもそも、ダンや俺が、誰とくっ付いて居ようがお前には関係無いだろ。ダンにしろ俺にしろ、お前を選ぶ事自体が有り得ねぇんだからな」

「そうですね。僕もマッドさんを、貴女のような、男なら誰でも良い相手に渡す気は有りませんから」


 ライラがマッドの後ろから顔を出す。


「誰よ?!あんた!」

「僕ですか?僕はマッドさんの伴侶ですよ。ダンさんとも知り合いですが、僕も貴族関係者ですから、発言には気を付けて下さいね。それと、僕の名は、貴女に名乗る程の価値は貴女に有りませんので、僕の名を聴いた所で名を呼ばないで下さいね。舌を引き抜きたくなりますから」

「はぁ?!このあたしに、喧嘩売ってんの?!」

「喧嘩を売ったのはそちらでしょう。そんな事も気付けない程、貴女の頭はカラッポなんですね。目だけでなく、頭まで腐っているようですよ。貴女はこの国の上位も上位、王族に喧嘩を吹っ掛けて居たんです。そんな貴女が、のうのうと外を出歩けるとでも?」


 ライラはバッサリ言い切った。
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