氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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後日談

昔の傭兵仲間 1

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 ダンが、シルビアに連れられて、王都の街並みを歩いていると、いきなり声を掛けられた。

 それは昔、何度か助っ人として仕事を共に熟した事の有る、傭兵団に所属していた、女傭兵だったのだが。


「……ダン?ダンじゃない!ここ十数年、全然見掛けないと思ってたら、この国にいたのね!……って……なぁに?その女。ああ、素人の花売りかしら?あっちに行きなさいな。邪魔よ。ダンってば相変わらず商売女には甘いんだから」


 ダンの腕を取り、引っ張っていたシルビアを、女は蔑んだ目で見て、犬猫を追い払うかのように手を振る。

 どう見ても玄人娼婦には見えなかったからだろうが、ダンとしては最愛の伴侶を素人の売春婦だと言われて、ムカつかない訳が無い。

 ダンは、吃驚してるシルビアを引き寄せ、腕の中に収めると、殺気とも取れる、怒気を含んだ声を出す。


「あぁ?俺に喧嘩売ってんのか?俺をお前のような好き者と、一緒にすんなや。俺の嫁を邪魔者扱いする前に、野郎なら誰とでも寝る、尻軽具合をどうにかしろよ。確か、仲間内で野郎共に取り合いされて喜んでたよな?俺がお前みたいな女が一番嫌いだって気付きもせずに何度も何度も寄って来やがって、いい加減にしろや。お前のような野郎の心を弄ぶような女なんざ、お呼びじゃねぇよ」


 今までダンは、この女傭兵に対して、ここまであからさまに、嫌悪感を剥き出しにした事は無い。

 ダンの方はフリーの傭兵で、団に所属していた訳では無かったので、団員でも無いのに注意したり関わったりと、相手をしてやる義理も無いと思っていたのだ。


「なっ……嫁?!その女が?」


 殺気に近い怒気を向けられ、顔色を変えた女傭兵は、言葉を詰まらせるものの、ダンの口から出た『嫁』と言う単語が気に掛かったようだ。


「言っとくが、邪魔しようとしても無駄だぞ?女に手ぇ上げる気はねぇが、俺の最愛の妻にちょっかい掛けるようなら、容赦はしねぇ。俺ぁこれでもお貴族様に仕えてんだ。俺の関係者に手ぇ出してみろ。再起不能になるまで徹底的に潰してやる」


 勿論、ただの脅しでは無い。

 敵対する気なら、エヴァンス家やクルルフォーン家の力を借りてでも、この国に居られないようにしてやるとダンは思っている。


「結婚?貴族?嘘でしょう?!」

「何だぁ?俺が嘘を言うような奴にでも見えんのか?お前と一緒にすんなや。お前の場合は男なら誰でも良いのかも知れねぇが、俺ぁこいつだけで良いんだよ。その目障りなツラ、二度と俺の前に見せんな」


 ダンは態度を改めずに、女傭兵に言い切った。
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