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後日談

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「ダン、ダン、今日、とお様が帰って来るの!それでね、それでね、リラ達も王都に行くのよ♪勿論、ダンも一緒よ♪」

「リラ嬢ちゃんは、王都は初めてなのか?」

「そうなの!王都、初めてなのよ!だからね、だからね、ダン、リラと、かあ様守ってね?」

「あー、俺ぁ良いが、リラ嬢ちゃんの父親が、良いって言ってからだぞ?俺ぁまだ、ここの旦那には会ってねぇからなぁ」

「ダン、大丈夫!リラ、守ってくれた!変なおじさん、怖かったの。でも、ダン、助けてくれた!初めての時、格好良かったの~♪」


 リラがキラキラとした瞳で見詰めて来るが、ダンからすれば不思議だった。


「俺ぁ怖くは無かったのか?」

「怖い???ダンが?ダン、風の王様みたいだった~♪」

「……風の王?」


 ダンにとっては、嫌な予感が頭を掠めた。


「ああ、数年前に他国訪問の際に、大旦那様が手に入れた、エヴァンス家にある子供向けの童話です。元は、異国の物語で、褐色の肌を持つ王子が、諸国放浪の旅に出て、悪者を倒して行く話です。風の由来は、敵を翻弄し、舞うような姿から来ているそうで、作者は異国の舞姫をモデルにしたそうですよ?」

「……マジかぁ~~~っっ!!!」


 突如頭を抱えて叫び、うずくまるダン。

 それもその筈。このモデルと言うのは、ダンの母親の、ミーシャの事だからだ。

 そうとは知らないリラとシルビアは、キョトンとしている。


「ダン?どうしたの?頭、痛い?」

「どんだけ遠くまで流れてんだ、あの本……」


 因みにそれは、ミーシャが独身の時に、ミーシャを題材にした話らしい。

 ダンも読んだ事は有るが、ミーシャを男にして、知性と教養をプラスした感じだが、見る人が見れば、ミーシャと判るぐらいの物で、剣舞を上手く描写し、悪者相手との立ち合いにも上手く用いられていた。


「ダンさんも知ってる本だったんですか?」


 知ってるも何も、母親がモデルの本だ。知らない訳が無い。


「あー、一応?出版元は近隣国で、俺の住んでた国にも、そこそこ入って来てた本だったからなぁ……」

「じゃあ、ダン、続き、知る?」

「あぁ?ああ、一目惚れしたどこぞの王女と結婚して、可愛い姫を産みました、って話だったなぁ」


 誰が姫だ、誰が!と、この物語を読んだ当時のダンは、そう叫んだ覚えが有るので、間違い無い。

(こんな場所で、あの本の話を耳にするなんざ、思わんかったっつうの……)

 ダンは微妙な気持ちのまま、ジルギリスと対面する事になったのだった。
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