氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
526 / 805
後日談

8

しおりを挟む
 一頻ひとしきり振って、呼び鈴を鳴らし終えたリラが、再びダンの傍に戻ってくる。


「ダン、ダン、お話して?リラの知らない、お話して?」


 リラにねだられ、乞われるまま、リラの知らない、他国の話を披露する。

 そんな事をしていると、部屋の扉をノックされ、食事が運ばれて来た。持って来たのはシルビアだ。


「どどどどっ、どうぞ!」

「食べてね?沢山!」

「俺が食べても良いのか?」

「勿論です!先程は、有難う御座いました」


 シルビアがダンに頭を下げた為、ダンの目の前で、シルビアの髪がサラリと滑り、キラキラと輝く。

(この国じゃあ、俺みたいななりの、見掛けん色合いには、ことごとく蔑むのが礼儀かと思ってた程なんだがなぁ)


「いや、こっちこそ有難い。んじゃ、遠慮無く頂くわ」

「シルビー、ダンね、ダンね、遠いお国から来たのよ?後ね、後ね、すっごく遠いお国には、一年中溶けない、氷の河が有るんだって!」

「正確には溶けちゃいるんだが、表面は氷で覆われてんだよ。一応河だからな。パッと見動いて無いように見えるが、その氷が押し出されて海に落ち続けてるから、ゆっくりとだが動いてんだよ」

「後は?後は?」

「砂漠……海の水が、全部砂になってるような場所も有るなぁ。と言っても、海程広くは無いがなぁ」

「他は?他は?」

「こことは違う領域の場所にも、ここと同じ花が存在するらしいぞ?」

「ディーラン、有る花?」

「ああ。カルハゼでは、なんつったっけな?確か……リゼーテの花だ!」


 因みに、カルハゼと言うのは、ディーランが共通語として使う、カルハゼ語の領域圏内の事を言う。


「リゼーテ、山咲く。有る?他の領域」

「クルセイの領域では、リーガって呼ばれてた筈だ」

「リゼーテ!リーガ♪」


 リラはとてもご機嫌で、食事をするダンとの会話を楽しんでいるようだ。


「ご馳走さん。さぁ~て、俺ぁそろそろおいとまさせて頂くな」

「駄目ぇ!ダン、リラと一緒いるのぉ!ずっと一緒、帰っちゃやぁ~!お願い!どこにも行かないでぇ~!」


 リラの目が、次第に潤み、大粒の涙をポロポロ流す。


「ぅお?!泣くな!嬢ちゃん!暫く居てやっから!」

「ほっ……本当?どこ、にも、行かない?」

「ああ、暫く、この近辺の宿にでもーー」

「駄目ぇ!ダン、お家、いるのぉ~!」

「いやいや、さすがに充分世話んなってっから、これ以上ーー」

「行かないで、行かないでぇ、帰っちゃやぁ~!」


(どうするよ、この状況……)

 ダンは珍しく困った。


「あー、じゃあ、家のもんに……お嬢ちゃんの親にちゃんと許可を取れたらな?」


 そしてダンは、リラの親に、丸投げした。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...