上 下
489 / 805
後日談

22

しおりを挟む
 庭に出て、ダンの探索を暫くしていると、少し離れた場所で、楽しそうな聴き馴染みのある、双子達の声が聴こえてくる。


「「ダン、蒔く?蒔く~♪」」

「ああ。ここから、あそこの道具を置いた場所までだ。二列になってるから、二人で競争な。ただし、丁寧に優しく土を被せる事だ」

「「はぁ~い!♪」」

「終わったら声掛けろ。俺ぁちょっと客の相手をしてるから」

「「……客、いらな~い……」」


 不機嫌な声で、双子が答える。


「そう言うな。後でたっぷり稽古付けてやるから」

「「なら、良い~♥」」


 そんな声が聴こえる方に、マッドは向かい、声を掛ける。


「ダンちゃん、あたしが来るって分かってるのにぃ、庭じゃなく、屋敷の中で待っててくれても良いんじゃなぁい?」

「ああぁ?んなもん、時間の無駄だろが。俺だって仕事が山程有るんだぞ」

「まぁ、確かにそうねぇ。こんなに広いお庭だものぉ」

「で、そいつか?」

「そうそう!この子がライちゃん♪宜しくねぇ~♪」

「俺ぁここの庭師をしてるダンだ。宜しくな」

「えっ?庭師?!」

「何だぁ?教えてなかったのか?マッド」

「あぁっ?!ごめんねぇライちゃん!ダンちゃんの本業喋るの忘れてたぁ!!でもでもぉ、ダンちゃんがあたしよりも強くて、適性を見極めるのが得意なのは本当だからぁ!元傭兵で、今でも強い事に変わりはないからぁ!」

「おいマッド。言えば言う程嘘臭くなってんぞ?」

「いやぁ~っ!……ってダンちゃんの事なんだからぁ、ダンちゃんも弁解しなさいよぅ!」

「俺ぁ初対面だろが。それに、庭師だと侮ってくれてる方が扱い易いんだよ」


 そんな仲の良いじゃれあいのような二人の会話を聞いてると、ライラの中に、ムカムカした物が募る一方だ。

 ライラは極力顔に出さないよう、視線をも逸らすが、そんなライラをダンは、ジッと見詰めている。


「取り敢えず、手合わせしてみるか。話はそれからの方が良いようだしなぁ」

「あっ、そうだダンちゃん!ライちゃんは、あくまでもあたしの弟子なんだからぁ、弟子の横取りは禁止よぉ?!」

「これ以上押し掛けの弟子なんざいらねぇよ。んな事言ってっと、双子に射殺されるぞ、お前が」


 ダンが、双子のいる方向を目で促す。


「えっ?って、ちっ……違うのよぉ?!ルナちゃん、ルネちゃん!あたしはダンちゃんを二人から取ろうとなんて、これっぽっちも思ってないからぁ!!」


 そのマッドの言葉は、双子には嘘臭く聴こえたらしく、双子は不機嫌丸出しで一言口にした。


「「帰れ」」


「だからぁ違うってばぁ!ちょっとダンちゃん、誤解を解いてぇ~!!あんな可愛い双子達に嫌われるなんて嫌よぉ~!!」


 マッドはダンに涙目で訴えた。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話

束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。 クライヴには想い人がいるという噂があった。 それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。 晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。

継母の品格 〜 行き遅れ令嬢は、辺境伯と愛娘に溺愛される 〜

出口もぐら
恋愛
【短編】巷で流行りの婚約破棄。  令嬢リリーも例外ではなかった。家柄、剣と共に生きる彼女は「女性らしさ」に欠けるという理由から、婚約破棄を突き付けられる。  彼女の手は研鑽の証でもある、肉刺や擦り傷がある。それを隠すため、いつもレースの手袋をしている。別にそれを恥じたこともなければ、婚約破棄を悲しむほど脆弱ではない。 「行き遅れた令嬢」こればかりはどうしようもない、と諦めていた。  しかし、そこへ辺境伯から婚約の申し出が――。その辺境伯には娘がいた。 「分かりましたわ!これは契約結婚!この小さなお姫様を私にお守りするようにと仰せですのね」  少しばかり天然、快活令嬢の継母ライフ。 ■この作品は「小説家になろう」にも投稿しています。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

処理中です...