481 / 805
後日談
14
しおりを挟む
五日後、マッドは約束の場所に向かうと、コランが既に着いていた。
「悪ぃなコランさん、待たせたか?」
マッドは基本、時間前に着くようにしているので、今回も時間前には来ているのだが、コランもその口なのだろう。
客商売だから、時間厳守は勿論、時間前行動が身に付いているようだ。
「いえ、それ程でも有りません!」
コランの格好は、さすが仕立て屋だと思えるような、よく似合う衣装を纏っていた。
「あの、忘れない内に、これを受け取って頂けませんか?奢りは嫌だと仰られたので、私に出来る最大のお礼として、マッドさんに似合うだろう、シャツを作ったのですが!!」
紙袋をマッドに差し出し、頭を下げるコラン。
「あの時は、本当に有難う御座いました!貴方がいて下さらなければ、きっと、あの貴族令嬢にお叱りを受けただけで無く、店に多大なる損害が出る恐れも有りましたので、本当に助かりました。これは当店のお礼として、店主からも許可を頂き作った物です!是非、お受け取り下さい!」
「あっ……有難う?いや、そんなに気を使わなくても良いぞ?たまたま見るに見かねて、口出ししたに過ぎねぇんだからなぁ。でも、まぁ、有り難く貰っとくわ」
店の店主からの許可まで貰い、態々作った物をいらないと突っ返す程、マッドは冷たくない。
何せマッド用。
貴族が買いに来るような店で、マッドのような体格の者は殆どいないだろう。
となれば、マッドが受け取らなければ、態々作ったと言うのに、このシャツは廃棄処分になってしまう。
さすがにそれは可哀想過ぎるとマッドが受け取れば、コランはホッとした笑顔を見せる。
「あの……出来れば次回にでも、着心地とか、色々と感想を頂ければ嬉しいのですが!」
「おう、良いぞ、それぐらい」
「有難う御座います!」
ちゃっかりマッドとの次回の約束を取り付けるコランの内心は、喜びで溢れてる。
マッドはそんなコランを見て、仕事熱心だなぁと思っている。
今まで他者に恋情を抱かれた事の無いマッドは、嬉しそうに微笑まれても、仕事が好きで堪らないのだろうと思ってしまうのだ。
今までがそうであり、大昔にも親しくなった男相手に茶化しながら『あらぁ、そんなにあたしの事が好きなのぉ?』と聞いた事も何度か有るが、皆が皆、全員仕事に決まってるだろう!と、ある者は笑いながら、ある者はドン引きしながら返して来たのだ。
さすがのドン引きに傷付いたマッドは、ダンに愚痴ったものの、それ以降、そんな言葉を言う気にはなれない。
(好青年だけど、ちょっと眩しすぎるわぁ~)
マッドは内心溜め息を吐いた。
「悪ぃなコランさん、待たせたか?」
マッドは基本、時間前に着くようにしているので、今回も時間前には来ているのだが、コランもその口なのだろう。
客商売だから、時間厳守は勿論、時間前行動が身に付いているようだ。
「いえ、それ程でも有りません!」
コランの格好は、さすが仕立て屋だと思えるような、よく似合う衣装を纏っていた。
「あの、忘れない内に、これを受け取って頂けませんか?奢りは嫌だと仰られたので、私に出来る最大のお礼として、マッドさんに似合うだろう、シャツを作ったのですが!!」
紙袋をマッドに差し出し、頭を下げるコラン。
「あの時は、本当に有難う御座いました!貴方がいて下さらなければ、きっと、あの貴族令嬢にお叱りを受けただけで無く、店に多大なる損害が出る恐れも有りましたので、本当に助かりました。これは当店のお礼として、店主からも許可を頂き作った物です!是非、お受け取り下さい!」
「あっ……有難う?いや、そんなに気を使わなくても良いぞ?たまたま見るに見かねて、口出ししたに過ぎねぇんだからなぁ。でも、まぁ、有り難く貰っとくわ」
店の店主からの許可まで貰い、態々作った物をいらないと突っ返す程、マッドは冷たくない。
何せマッド用。
貴族が買いに来るような店で、マッドのような体格の者は殆どいないだろう。
となれば、マッドが受け取らなければ、態々作ったと言うのに、このシャツは廃棄処分になってしまう。
さすがにそれは可哀想過ぎるとマッドが受け取れば、コランはホッとした笑顔を見せる。
「あの……出来れば次回にでも、着心地とか、色々と感想を頂ければ嬉しいのですが!」
「おう、良いぞ、それぐらい」
「有難う御座います!」
ちゃっかりマッドとの次回の約束を取り付けるコランの内心は、喜びで溢れてる。
マッドはそんなコランを見て、仕事熱心だなぁと思っている。
今まで他者に恋情を抱かれた事の無いマッドは、嬉しそうに微笑まれても、仕事が好きで堪らないのだろうと思ってしまうのだ。
今までがそうであり、大昔にも親しくなった男相手に茶化しながら『あらぁ、そんなにあたしの事が好きなのぉ?』と聞いた事も何度か有るが、皆が皆、全員仕事に決まってるだろう!と、ある者は笑いながら、ある者はドン引きしながら返して来たのだ。
さすがのドン引きに傷付いたマッドは、ダンに愚痴ったものの、それ以降、そんな言葉を言う気にはなれない。
(好青年だけど、ちょっと眩しすぎるわぁ~)
マッドは内心溜め息を吐いた。
34
あなたにおすすめの小説
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる