氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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後日談

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「わっ、私は執事とは、事務職の上役で、貴族に相対する事も有るけれど、それは主人への取り次ぎの為の事務仕事だと思っていました……」

「僕は言った筈だけどね?執事とは宰相や大臣の位置に居ると。見知らぬ相手との交渉の際に、お前は何の話かも知らない内から、相手に会わせる手筈を整えるのか?相手が嘘を言ってるかも知れないのに、それらしい建て前が有れば、調べもせずにそのまま取り次ぐ気か?相手が悪事を企てても?事務職ってそう言う事だぞ。お前、どれだけ主人に負担を掛ける気?言っとくけど、それって主人がエドワルド様だから成立しただけで、他の貴族だったら全く成立しないから。しかもお前、僕が来る前は書類整理の仕事とかを、ジェフに教わっていたんだよね?ジェフが来る前は執事として、一体何の仕事をしてた訳?執事として働き出して、五年以上は経ってる筈だよね?それでよく事務職だなんて言えるよね」

「すっ……すみません……」


 サイナスのブリザード級の怒りを感じて、ランドールはガタガタと震えるしか無い。


「お前さ、執事職辞めるか?僕はこの前、エドワルド様と正規契約を交わしたから、クルルフォーン家には僕が居るし、別に執事に拘る意味無いんじゃない?根本的な執事の職種すら勘違いしてたんだから」


 サイナスの言葉で、執事見習いすら危うい状況を理解するも、それだけは嫌だと必死に首を横に振るランドール。

(今ここで、執事職を辞めれば、きっとクルルフォーン家には居られなくなる。元々エドワルド様は、従者なんて居ても居なくても良いような主人だし、この人が居れば、何事も無く万事解決してしまう!!)

 クルルフォーン家はランドールを必要としなくても、ランドールはクルルフォーン家の他に行く場所も宛も無い。

 勿論貯金は有るし、退職金も出るだろうが、今更他の家で、侍従として働くなんて出来ないし、かと言って、全然違う職種、街で仕事を探した所で、貴族に仕えてたような者を雇う店は少ない。

 子爵や男爵と言った家の使用人なら未だしも、ランドールは公爵家の使用人だ。本来は他の公爵家や侯爵家に推薦状を書いて貰う事も出来るが、執事の職種を勘違いしたまま、五年以上勤めていた為、既にランドールはクルルフォーン家の執事として知られてるし、そんなランドールが従者職を選ぶ事自体がおかしい。

 詮索されて当然だし、クルルフォーン家で執事をしていた者を、他家が侍従として雇えば、王弟の執事を蔑ろにしたのではないかと陰口を叩かれる可能性が高い。

 そうまでしてランドールを雇う場合、クルルフォーン家との繋ぎ役として利用するだけ利用されるか、エドワルドの評判を落とす為に利用されるかぐらいだろう。

 どちらにしろ、エドワルドに多大な迷惑を掛ける事になるのだから、それだけは何としても避けたいランドールは、ドレス姿のままで、必死に首を横に振るしか出来なかった。
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