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後日談

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 ランドールにとって、メイクの時間は地獄だった。

 少しでも動くと侍女達に怒られるし、目元のメイクなんて、化粧道具で目を突かれそうで怖いし、思わず目を瞑ればまたも怒られる。只管ジッとしている事が、こんなにも苦痛だなんて思わなかったのだ。

 しかも、ウィッグを付けられ、髪型まで時間を掛けられてしまったのだ。

 これが毎日だなんて、ドレスと言い化粧と言い、よく耐えられるなと思ってしまう。

 髪を整える時間も入れれば、二時間は掛かったであろうランドールは漸く解放されるのだが、そんなげんなりとしているランドールを連れて、サイナスは別の部屋へと向かう。

 そこには家庭教師のような格好の女性が佇み、一般的な令嬢の礼儀を教えると言われ、歩き方からお辞儀の仕方まで、悉く注意される。


「そんなに大股でドスドスと歩かない!上半身を揺らさない!下を向かない!お辞儀をする時はふらつかない!!」


 お辞儀の角度や膝の曲げ方、裾の持ち上げ方やその高さ等、事細かに指摘され、駄目出しを何度もされて、昼過ぎまで扱かれる。

 昼食は好きなように食べても良いと言われるが、ドレスがキツくて食べられない。

 それこそいつもの量を食べようものなら吐くのだろうと思える程だ。

 そうして昼食が終わり、今度は刺繍や編み物と言った花嫁修業の一環をさせられ、午後のお茶の時間帯になると、サイナスに屋敷の裏庭へと連れ出される。


「今度は何をさせる気ですか……」

「何ってお茶会だよ。女性達が午後のこの時間帯にするのなんて普通で考えれば、お茶会ぐらいだろ?」


 茶会と聞いて、ランドールはホッとした。

 何せ茶会と言われて思うのは、休憩と言ったイメージだからだ。

 裏庭に行けば、協力者であろう侍女達と、マッド達もいた。


「サイナスちゃ~ん♪お茶会のお誘い有難う~♪あたし達はこっちで見物してて良いって本当???」

「勿論ですよ、マッドさん。何なら彼の駄目な所を駄目出しして下さい」


 マッド達も勿論ドレスを着用している。


「そうおぅ?じゃあ早速。ランちゃんあなた、髪が乱れてるわよぅ?身嗜みは女の命よ!序でに化粧も直して貰いなさい!」

「らっ、ランちゃん?!」

「ああ、やっぱりそう思いますか。彼には自分の姿がよく見えるように、鏡が有る場所を多く通ってきましたが、全く気付かないようで……。女性の心得を学んでいると言うのに、これでは落第点で追試になってしまいます」

「つっ……追試?!」

「当然ですよ。講師が教えるマナー講習もまだ合格を受けていなかったでしょう?言っておきますが、あれは子供が習うマナーですよ。子供に出来て、貴方に出来ないなんて事は無い筈です。そもそも貴方は、真剣にしていらっしゃいましたか?全てに及第点まで届かなければ、毎日ドレスを着用させますからね」


 サイナスに冷たく言われ、ぐうの音も出ないランドールだった。
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