419 / 805
後日談
11
しおりを挟む
ランドールにとって、メイクの時間は地獄だった。
少しでも動くと侍女達に怒られるし、目元のメイクなんて、化粧道具で目を突かれそうで怖いし、思わず目を瞑ればまたも怒られる。只管ジッとしている事が、こんなにも苦痛だなんて思わなかったのだ。
しかも、ウィッグを付けられ、髪型まで時間を掛けられてしまったのだ。
これが毎日だなんて、ドレスと言い化粧と言い、よく耐えられるなと思ってしまう。
髪を整える時間も入れれば、二時間は掛かったであろうランドールは漸く解放されるのだが、そんなげんなりとしているランドールを連れて、サイナスは別の部屋へと向かう。
そこには家庭教師のような格好の女性が佇み、一般的な令嬢の礼儀を教えると言われ、歩き方からお辞儀の仕方まで、悉く注意される。
「そんなに大股でドスドスと歩かない!上半身を揺らさない!下を向かない!お辞儀をする時はふらつかない!!」
お辞儀の角度や膝の曲げ方、裾の持ち上げ方やその高さ等、事細かに指摘され、駄目出しを何度もされて、昼過ぎまで扱かれる。
昼食は好きなように食べても良いと言われるが、ドレスがキツくて食べられない。
それこそいつもの量を食べようものなら吐くのだろうと思える程だ。
そうして昼食が終わり、今度は刺繍や編み物と言った花嫁修業の一環をさせられ、午後のお茶の時間帯になると、サイナスに屋敷の裏庭へと連れ出される。
「今度は何をさせる気ですか……」
「何ってお茶会だよ。女性達が午後のこの時間帯にするのなんて普通で考えれば、お茶会ぐらいだろ?」
茶会と聞いて、ランドールはホッとした。
何せ茶会と言われて思うのは、休憩と言ったイメージだからだ。
裏庭に行けば、協力者であろう侍女達と、マッド達もいた。
「サイナスちゃ~ん♪お茶会のお誘い有難う~♪あたし達はこっちで見物してて良いって本当???」
「勿論ですよ、マッドさん。何なら彼の駄目な所を駄目出しして下さい」
マッド達も勿論ドレスを着用している。
「そうおぅ?じゃあ早速。ランちゃんあなた、髪が乱れてるわよぅ?身嗜みは女の命よ!序でに化粧も直して貰いなさい!」
「らっ、ランちゃん?!」
「ああ、やっぱりそう思いますか。彼には自分の姿がよく見えるように、鏡が有る場所を多く通ってきましたが、全く気付かないようで……。女性の心得を学んでいると言うのに、これでは落第点で追試になってしまいます」
「つっ……追試?!」
「当然ですよ。講師が教えるマナー講習もまだ合格を受けていなかったでしょう?言っておきますが、あれは子供が習うマナーですよ。子供に出来て、貴方に出来ないなんて事は無い筈です。そもそも貴方は、真剣にしていらっしゃいましたか?全てに及第点まで届かなければ、毎日ドレスを着用させますからね」
サイナスに冷たく言われ、ぐうの音も出ないランドールだった。
少しでも動くと侍女達に怒られるし、目元のメイクなんて、化粧道具で目を突かれそうで怖いし、思わず目を瞑ればまたも怒られる。只管ジッとしている事が、こんなにも苦痛だなんて思わなかったのだ。
しかも、ウィッグを付けられ、髪型まで時間を掛けられてしまったのだ。
これが毎日だなんて、ドレスと言い化粧と言い、よく耐えられるなと思ってしまう。
髪を整える時間も入れれば、二時間は掛かったであろうランドールは漸く解放されるのだが、そんなげんなりとしているランドールを連れて、サイナスは別の部屋へと向かう。
そこには家庭教師のような格好の女性が佇み、一般的な令嬢の礼儀を教えると言われ、歩き方からお辞儀の仕方まで、悉く注意される。
「そんなに大股でドスドスと歩かない!上半身を揺らさない!下を向かない!お辞儀をする時はふらつかない!!」
お辞儀の角度や膝の曲げ方、裾の持ち上げ方やその高さ等、事細かに指摘され、駄目出しを何度もされて、昼過ぎまで扱かれる。
昼食は好きなように食べても良いと言われるが、ドレスがキツくて食べられない。
それこそいつもの量を食べようものなら吐くのだろうと思える程だ。
そうして昼食が終わり、今度は刺繍や編み物と言った花嫁修業の一環をさせられ、午後のお茶の時間帯になると、サイナスに屋敷の裏庭へと連れ出される。
「今度は何をさせる気ですか……」
「何ってお茶会だよ。女性達が午後のこの時間帯にするのなんて普通で考えれば、お茶会ぐらいだろ?」
茶会と聞いて、ランドールはホッとした。
何せ茶会と言われて思うのは、休憩と言ったイメージだからだ。
裏庭に行けば、協力者であろう侍女達と、マッド達もいた。
「サイナスちゃ~ん♪お茶会のお誘い有難う~♪あたし達はこっちで見物してて良いって本当???」
「勿論ですよ、マッドさん。何なら彼の駄目な所を駄目出しして下さい」
マッド達も勿論ドレスを着用している。
「そうおぅ?じゃあ早速。ランちゃんあなた、髪が乱れてるわよぅ?身嗜みは女の命よ!序でに化粧も直して貰いなさい!」
「らっ、ランちゃん?!」
「ああ、やっぱりそう思いますか。彼には自分の姿がよく見えるように、鏡が有る場所を多く通ってきましたが、全く気付かないようで……。女性の心得を学んでいると言うのに、これでは落第点で追試になってしまいます」
「つっ……追試?!」
「当然ですよ。講師が教えるマナー講習もまだ合格を受けていなかったでしょう?言っておきますが、あれは子供が習うマナーですよ。子供に出来て、貴方に出来ないなんて事は無い筈です。そもそも貴方は、真剣にしていらっしゃいましたか?全てに及第点まで届かなければ、毎日ドレスを着用させますからね」
サイナスに冷たく言われ、ぐうの音も出ないランドールだった。
26
お気に入りに追加
9,278
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番
すれ違いエンド
ざまぁ
ゆるゆる設定
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる