氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
上 下
38 / 805
SS置き場

累計6500000ポイント突破記念♪ ~春はこんな所にも来た~

しおりを挟む
 リラがクルルフォーン家に移り住み、その後リラから女子会のお誘いが有り、マッドがエヴァンス家から、お気に入りのドレスをクルルフォーン家に運んでいる最中に、貴族区画内だと言うのに、やけに騒がしい。

 女子会までは、まだまだ時間も有るし、何となく野次馬根性で騒がしい方に向かうと、そこには貴族女性と、どこかの店の者だろう平民が貴族の家の前にいて、只管平民の方が謝っていた。


「だから言ってるでしょう?!あのクルルフォーン公爵様の結婚式で、彼女が着ていたとされるウエディングドレスを再現するか、それに似たドレスを作りなさいと!!貴方、王都の一流の仕立て屋でしょう?!何故あのドレスを再現出来ないと言うの!」

「あれは、あの方にしか合わないように作られているのです!あの方と同じような物を作ったとしても、全くの別物、私達平民は、あのドレスを遠目で拝見させて頂きましたが、背の高さや体型、あの方の雰囲気を取り入れた上での逸品で、他の女性が真似て着ても、全くの別物になってしまうのです!」


 彼が言うのももっともだ。あれは、リラをよく知る侍女が、リラの魅力を最大限に引き上げる為の最高傑作。他の女性が真似て着た所で、全くそぐわない、ちぐはぐの物になるだけだ。

(全く、道端で何を騒いでるのかと思えば……。そう言う事は、屋敷内でやれば良いのに。しかも、体型や背格好が似てるなら、まだ何とかなるかも知れないけどねぇ……)

 際立ってと言う程でも無いが、リラは貴族女性の平均な背の高さよりも高い方だ。

 ジーンやエドワルドも、貴族男性の平均な背の高さよりも高い為、リラが高いヒールの靴を履いて背筋を伸ばしても、リラの方が断然低いが、背の低い貴族男性だとリラと同じか、リラが抜いてしまい兼ねないぐらいだ。

 対する目の前の貴族女性はと言うと、顔は可愛らしい部類に入るのだろうが、背格好も体型も普通だ。どう見た所であのドレスは似合わない。

(そりゃあ断って当然よねぇ、同じような物を作って渡した所で、試着段階で全然違うって文句言うのは目に見えてるしぃ。ああいった注文は一番困るってのに、馬鹿な小娘ねぇ。ここは一つ、公爵様のお名前借りちゃおぅ~っと♪)


「おい、いい加減諦めろ。ありゃあ、そんじょそこらの女が簡単に着こなせるドレスじゃねぇって言ってんだよ。それに、似合いもしない女が、奥方のドレスを真似たって知ったら、公爵様の不興を買うぞ?」

「あっ、あんた誰よ?!そもそも公爵様に知られる事は無いし、知られたとしても、貴族社会で流行するし、平民がお金儲けの為に作るんだから、文句は出ないわよ!!」

「流行らねぇよ、あんな特別誂えの逸品なんざ。着こなせる女が少な過ぎる上に、あんな時間も大金も掛かるドレス、出来上がりは何年後だ?早くても一~二年は掛かるぞ?そうだよな?」


 マッドが青年に視線を向けると、仕立て屋の青年はコクコク頷く。


「そんな!!それじゃあ流行に乗れないわよ!!」

「流行らせる為のもんじゃねぇからな。ほら、行くぞ。ああそれと、俺ぁ一応エヴァンス家にもクルルフォーン家にもコネが有ってな。今回の事は報告させて貰うぞ」

「「!!?」」


 貴族女性が固まってる内に、マッドが青年を連れて、その場を去る。


「あの……ドレスにも相当お詳しいですよね?貴方は一体?」

「ああ、気にすんな。たまたま通り掛かっただけだ。ドレスに詳しいのは……あたしの中身が女だからよ。この後、クルルフォーン邸の若奥様に、お茶会に誘われてるの。仕立て屋なら判るでしょう?このドレスが誰の為に作られたのか。そう言う事だから、じゃあね」


 人のいない場所で内緒話をするようにして、ドレスをその身に軽く当て、ウインク付きの笑顔を見せた後、颯爽とその場を去るマッドを見送り、彼は甘い溜め息を吐いた。



*****

 ※いつも有難う御座います~♪
 今回、マッドの春は遠いですか?と言う月影さんの問いと、智秋さんのマッドにはトレンディドラマのような出会い(あのドレス関係で知り合った、仕立て屋青年の片想い希望)と言う事でこんな感じになりましたが如何でしょうか?!(笑)
 因みに、クロナさん案のマッドと逆パターンの女性外見に中身が男性との春、智秋さんの両手に華(ただしこれは脳内マッドがちゃんと一人をえらぶわよぅとの事ですが、いぬぞ~さんのマッドがウエディングドレスを着る?と言った事も後々出せれば良いかなぁとおもってます(笑)
 こちらは桜が見頃を迎えてます。お花見行かなきゃ!と思える程の花盛りです♪
 皆様に少しでも楽しんで頂けたら幸いです!!
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...