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本編

331 (エドワルド視点)

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 リラが馬車で大聖堂へと向かっている頃、エドワルドは式場の前で、リラの乗る馬車がまだかまだかと待ち侘びていた。

 エドワルドとしては、リラをエヴァンス邸まで迎えに行きたかったのだが、式を挙げる男女は、喩え同じ屋敷に暮らしていたとしても、式を挙げる朝だけは、顔を会わさず式場前で会う風習がこの国には有る。

 そして、出席者は、花嫁到着を見る事は出来るが、主役の二人に近付いてはならない。近付いて良いのは親族と、家族同然の付き合いがある者達だけだ。

 リラが来ないなんて事は無いと信じているが、一秒一秒が途轍も無い程にゆっくりと感じ、エドワルドにとっては苦行でしか無い。

 花嫁が通る道には、馬車を降りてもドレスが汚れないようにと、絨毯が敷き詰められており、その絨毯を踏んで良いのは、式を挙げる二人のみ。

 エドワルドが立つのはその始まりの場所で、馬車が停止する場所。

 何度も懐中時計を確認し、時間の針が、ちっとも動かない事に苛立ちすらしてしまう程だ。

(こんなにも長く感じるとは、思ってもいなかった。リラが居れば、こんなに長く感じる事なんて無かったのに……。そもそも、予定の時間すらも過ぎていないなんて、どれだけ長く感じているのだ私は……)

 先程から、一分も経たない内に何度も時計を見返して、出しては入れ、出しては入れを繰り返す。

 他から見れば、かなり急いてるのが分かるだろう。

 そして、出席者の貴族達は、内心エドワルドを嘲笑う。

 確かに見た目だけは、美しい娘で有る事を認めてやるが、そこまでの価値も中身も無いと言うのに。と言った事や、エドワルドと一緒にいた姿を見た事は有るが、あんな冷たい娘、いずれ飽きる日が来るさ。と言った風に。

 それは、男だけで無く、連れとして、態々結婚式を見に、同行した女も似たような事を思っていた。

 だが、そんな事を内心思い、リラを馬鹿にしていた殆どの貴族達はこの後、自分の目を疑い、リラの姿と本性を目の当たりにした男女は、多大なる衝撃と紛れも無い敗北を決定付けられる事になるとは思ってもいないのだった。

 エドワルドが、待って待って待ち続けていた一台の馬車が、漸く姿を現す。

 その馬車は、三方向をジルギリスとジーン、ダンに守られながら、ゆっくりとエドワルドのいる馬車停めの方へと近付いて来る。

 馬車の外からは、中が見えないようになっている為、リラの姿を捉える事は出来ない。

 漸く馬車が停車し、馬車の扉の横にジルギリスが付く。

 扉が開き、さぁ、いよいよ花嫁とのご対面だ。
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