氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

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 カミユがクルルフォーン邸を訪れたその日、ランドールはカミユ監修の元、ジェフ宛の手紙を書かされ、それにカミユが書いた手紙も添えられ、その日中にジェフの元へと届けられる。

 その手紙と共に、『クルルフォーン邸にて不祥事有り。至急の対応を』との口伝も受け取り、中身を見たジェフが、周囲に誰も居ない事を確認して、一人呟く。


「あの、馬鹿がっ……!!」


 そうして直ぐに数ヵ所宛の手紙を書き上げ、ジェフに手紙を渡し、一時的に席を外してくれていた同僚に、書き終えた手紙を宛名通りに届けて欲しいと頼むと、快く了承を貰い礼を言う。

 ジェフはレオン付きの侍従になると決まった時、とある人物に、万が一クルルフォーン邸で何かが起きた際は、クルルフォーン邸に最高責任者として入り、纏めるように頼んでいたのだ。当然これは一種の保険であり、念の為の指示だったのだが、リラが嫁入りする前に、この保険を投入する事になるとは思ってもいなかった。

 とは言え、何が起こるか分からないのが世の常と考えてるエヴァンス家の使用人達は、必ず何かしらの保険を掛けるようにしている為、備えは万全だ。

 その人物がジェフからの手紙を受け取り、中身に目を通し、クルルフォーン邸に向かう準備をする。と言っても、保険とは言え、いつ呼び出しが入るかも分からない為、いつでも直ぐに対応出来るよう、準備と言っても纏めてある荷物と数点の日用品を持って、出るだけだ。


「王都で待機していて欲しいと頼まれたけど、こんなにも早くにお呼びが掛かるとはね。ジェフは随分甘かったようだけど、僕はそうはいかないよ?エヴァンス家の侍女、しかも可愛い妹分に下らない疑いを掛けるなんてね……。僕は執事としてまだまだだけど、それはエヴァンス家からすれば、だしね。執事がどんな物なのか、徹底的に扱いてやる……。取り敢えず、王都のエヴァンス邸に挨拶してからだな」


 男は馬を操って、エヴァンス邸を訪れる。


「お久し振りです。ジェフの緊急呼び出しにより、急遽明日からクルルフォーン邸の最高責任者として入りますので、宜しくお願い致します」

「サイナス?!いつから王都に?」


 彼の王都入りを知らなかった使用人に驚かれてしまう。


「実は年明けからずっと。本当は、ジェフがクルルフォーン邸で、執事として入ったって聞いて、僕を差し置いて?って思っちゃったけど、書類整理等の仕事が中心って聞いて、それなら仕方無いかと思ってたら、そのジェフから保険として王都に来ていて欲しいって言われて待機してたんだよ。あまりに暇過ぎて、王都の隅々まで見学しちゃったよ」


 そう言って、鞄の中から大量のスケッチブックを出す。


「僕、絶対絵描きだと思われてるよ。変装してるから良いけどさぁ。そういう事で、明日から本業に戻って、徹底的に扱いていくよ。執事の仕事は、生半可じゃ出来ないってね。じゃあ、若様や奥様、お嬢様にも挨拶してくるよ」


 そう言ってサイナスは、出迎えた使用人の横を通り、エヴァンス邸の中に入って行った。
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