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本編

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 その夜、明け方近くまで、エヴァンス領でのリラとの結婚式の話を詰めて、寝室に戻り仮眠を取る。

 そして、いつもの時間になると起き出して、ダンに早朝の稽古を付けて貰おうと庭に向かえば、リラとバッタリ遭遇する。


「お早うリラ。目覚めて直ぐにリラと会えるなんて、とても嬉しいよ」

「えっ、エドワルド様!おっ、お早う御座います!あのっ、わたくし、昨日の夜……途中までは覚えているのですが、ねっ、眠ってしまったようで……。えっ、エドワルド様が運んで下さったと聞きました!ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした!!」

「迷惑だなんて思っていないよ。私としては、役得なのだから」

「わっ、わたくし、何か失礼な事はしませんでしたか……?」

「酔っ払ったリラも可愛かったよ。嬉しい事も沢山言ってくれたしね」

「?わたくし、エドワルド様に何か言ってましたか?」


 キョトンと首を傾げて聞き返す為、エドワルドは甘く優しい声で囁く。


「私の事が大好きだと言ってくれていたよ。ずっと一緒にいてともね」


 エドワルドの言葉に、リラは思わず顔を赤く染める。


「勿論私の返事は、『一緒にいるイエス』の一択だったけど。そう言えば、リラはこれからどこに行くの?」

「えっ、エドワルド様はどこに行く気だったのですか?」

「私はダンに稽古を付けて貰おうとおもってね」

「じゃあ、ご一緒しても、良いですか?」

「勿論。リラが傍にいてくれる方が、いつも以上に頑張れるよ」


 エドワルドの言葉に、リラは嬉しそうに微笑み、二人して、庭を目指す。

 庭に出て、庭弄りをしているダンに声を掛けて、早速手合せして貰い、リラは近くのベンチでその様子を見ている。

 朝食時間の少し前までダンに相手をして貰い、エドワルドはリラを部屋で待たせてバスルームで手早く汗を流し、新しい服に着替えてリラと共に食堂に向かい、席に着いて皆が揃うのを待ち、食事をする。

 今日は家でのんびりしようと、朝食後は庭をのんびり散策し、昼食後は先代であるジオラルドの許可を貰い、エヴァンス邸の敷地内に建てられている図書館に足を運ぶ。

 夕方までの時間を二人で本を読みながら過ごし、日暮れ前に本宅へと戻り、サロンで夕食までの雑談に興じる。

 夕食後もサロンに移動し、家族としての扱いを受けながら、エドワルドは充実した日々を過ごす。


「エドワルド殿、カードゲームをしよう。これなら人数が多くても出来るからね」


 そうしてその夜もエドワルドにとって、非日常だった日常が過ぎて行くのだった。
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