氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

298

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「おっ……お嬢様?」


 青年が、リラの言葉と不機嫌さに驚くが、リラは構わず声を上げる。


「店主を呼んでいらっしゃい!!貴方如きでは埒が明かないわ!この店は一体、どんな教育をしていらっしゃるの?!」


 リラが大声を上げると、奥の方からバタバタと足音が聞こえ、ここの店主が顔を出した。


「これはエヴァンス家のお嬢様!一体どうなさったのですか?!」


 リラは駆け寄って来た店主をキッと睨み付け、店員への怒りをちまける。


「この店の店員は、一体どういう教育をなさっているのですか?!客の悪口を面と向かって言えとでも教えていらっしゃるの?!それとも憐れめと?!わたくしはよく知りもしないこの方に、わたくしの婚約者の前で、どんな事でも相談して下さいと、些細な事だろうと何だろうと、きっとお力になりますよと言われたのです!!その上、わたくしが悲しむ姿を見たくは有りませんとまで言われましたが、わたくしが悲しむなんて、何故そう言い切れるのです?!確かにわたくしは、このエドワルド様に相応しくないのかも知れません!エドワルド様は、わたくしには勿体無い程のとても素敵な男性ですもの!!ですが、だからと言って、何故、高が顔見知り程度の店員に、そんな事を言われなければならないのですか?!」


 普段怒る事の少ないリラが、不快感を露わに店主に言い切り、怒りの元凶でもある青年にも食って掛かる。


「エドワルド様をよく知りもしない癖に、『お金に物を言わせるような方』ですって?!わたくしが、そんな方を好きになるとは思えないと貴方は仰いましたが、貴方にわたくしやエドワルド様の何が解ると仰るのですか!!確かにエドワルド様ならば、どんな女性でも選び放題ですよ!それでもわたくしが良いと、わたくしでなければ嫌だと仰って下さる素敵な方なのです!!そもそも、エドワルド様がいらないと仰ったのだって、大して親しくもない貴方が、エドワルド様を差し置いて、わたくしに商品をプレゼントする等と仰ったからではないですか!」

「……すみませんお嬢様。最初から、もっと詳しく教えて下さいませんか?」


 店主はずっとリラの怒りに戸惑っていたが、状況を少しずつ吞み込んでいった所に、商品をプレゼントと聞いて、リラに詳細を確かめる。

 勿論リラは店に入ってからの詳細を、青年の言葉も一言一句間違えずに伝えて、店主に問う。


「エドワルド様がわたくしを選んで下さる事が、そんなにもおかしいですか?わたくしなんて、直ぐに飽きられ捨てられると?もしそうなったとしても、わたくしはこの方を心底お慕いしているのです!わたくしに出来る事を全て試してでも、捨てられないよう只管努力するだけですわ。それを何故、赤の他人の顔見知り程度の店員の方に言われなくてはならないのですか?これは結婚するわたくしとエドワルド様の問題であって、他人が口出しする事では無いとわたくしは思うのですが、どう思われまして?」

「それは勿論、その通りだと思われますよ」


 店主がそう断言した時、横から待ったの声が掛かった。
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