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本編

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「もっ、もう大丈夫です。お騒がせしてすみませんでした」


 リラがそう言うので、エドワルドは腕の力を緩め、再びリラに腕を取らせる。


「では、リラがよく行く場所や、お勧めの場所に連れて行って欲しいな。私はこの街が初めてだし、リラがよく行く店も見てみたい。それと、リラに贈り物をしたいから、そういう店にも案内して欲しいな。二人で何がいいかを選ぼう。ああ、お揃いの物を選ぶのも良いな。勿論リラが良いと思うのならばだけれど」

「お揃い……」


 エドワルドの言葉に、リラが反応し、瞳をキラキラと輝かせる。


「エドワルド様とのお揃いが良いです!エドワルド様の分は、わたくしが買って贈りたいです!」

「駄目だよリラ、私の分は私が買うから」

「わっ……わたくしからの贈り物では、嫌ですか?」


 リラが泣きそうな顔になり、シュンと落ち込んでしまうのだが、エドワルドとしては可愛くて仕方ない。

 なのでここは、エドワルドが折れる事にした。

 エドワルドがリラの顎を、リラの持っていない方の手で上向けさせて、額と額を押し当て至近距離で見つめ合う。


「分かったよ。その代わりそれ以外の支払いは、全て私が持つからね。今日はデートなんだから、私の顔を立てさせて?」

「わっ、分かりました!そうします!!そうすれば、わたくしが買っても、受け取って下さるのですよね?」

「勿論受け取って、肌身離さず大切に持っているよ」


 エドワルドにそう言われ、リラは嬉しそうに笑うが、ハッとして周囲を見渡し、誰も見ていない事を確認して無表情を装う。

 エドワルドはそんな事をしていても、気付いている者はいるのだろうなと思っている。何せエドワルド自身がそうやって覗き見たのだし、領地でのリラは、話を聞いている分で推測するにしても、活動的なようなのだから。

 とは言え、エドワルドは指摘をしない。

 もうリラは、エドワルドに心を寄せてくれているし、エドワルドもリラを手放す気は毛頭無いのだから。

 今更リラを欲しがった所で、もうエドワルドの物になると決まっているし、誰にも渡す気は無い。

 リラを欲しがるのなら、エドワルドが虎視眈々と狙う前に手に入れていなければならなかったのだから。


「でしたらそろそろ行きましょう。わたくし、エドワルド様をお連れしたい場所や、一緒に行きたい場所が沢山あるのです」


 リラはそう言って、エドワルドを大通りの方へと促す。


「この街は街並みも美しく、多くの店や専門の学校、色々な施設も充実し、地区ごとに区切られていて、治安がとても良いのです。とは言え、わたくし達貴族の場合は、トラブルに巻き込まれ易いので、護衛は必要になりますが、ダンが居れば、わたくしだけでもお出掛けが許されるので、領地に居れば割とよく来る場所なのです。ですから、エドワルド様と一緒に来て歩きたかったので、とても嬉しいのです」


 無表情を装いつつも、リラの口元は少しだけ綻んでいた。
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