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本編

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 少しだけ庭を散策していると、少し離れた街にある、教会の鐘が鳴り響く。

 エヴァンス家は、当主、もしくは次期当主が城勤めの政務官である事が多い為、一般の貴族と比べると朝が早く、普通の貴族だと10時頃が朝食なのだが、エヴァンス家では、7時に鳴るこの鐘の音が食堂に集まる時間になっている。

 その為、リラとエドワルドは屋敷内へと戻り、食堂に着けば、エヴァンス姓の全員が揃っている。

 それを見たリラは慌ててジオラルドに声を掛ける。


「お待たせ致して申し訳御座いません!」

「いや、大して待ってはいないから、大丈夫だよ。さぁ、食事にしようか」


 ジオラルドはニコニコしながらそう言うと、リラ達に座るように促す。

 そんな様子を不思議そうに見るエドワルド。


「エヴァンス家では、朝と晩は出来うる限り、揃って食べる事になっているんだよ。貴族では珍しいかも知れないけれど、その方が効率もいいからね」


 ジーンがエドワルドに説明すると、ジオラルドが眉間に皺を寄せ、苦々しい声を出す。


「エドワルド殿は、あの前馬鹿王妃の所為で、家族との食事と言うのが、年に数回程度の物だったから、余計に不思議に思っているのだろうな。私達は知っていながら、役割上、王族との関わりを極力避けねばならんかったから、手助けも出来ず、申し訳なかった」

「大した問題では有りませんよ。私もあの人の悪意を感じていましたし、知っていて父や兄に知らせずにいましたから。ジオラルド殿やジルギリス殿には、エヴァンス家の役割が有るにも関わらず、私が危ない時は、ちゃんと助けて頂いていましたよ」


 リラはジルギリスから、ハンナが幼いエドワルドに、一人で食事をさせていたと聞いていたので驚きはしなかったが、ハンナに対する怒りが沸き上がって来る。


「もしも、会う機会が有れば、絶対に正論で打ち負かして差し上げます!!二度とわたくしとエドワルド様に近付きたくないと思う程に、見下してやるのです!!!」


 リラはハンナへの怒りを声に出す。


「お父様が毒薬投与し、監禁中だと言われましたが、エドワルド様の話を聞く限り、それぐらいで済むなんて、割りに合いません~!」

「ああ、大丈夫だよリラ。それ程度では済まないから」


 ジオラルドは、ニッコリと笑顔で言い切る。


「……お祖父様?」

「王都に戻って来たら、実家の没落が知らされるだろうからね。王家の金を横領した罪で、領地や家名も没収される手筈だから、社交界にも出られなくなるんじゃないかな?王族の面汚しな実家持ちとして」


 ジオラルドはニコニコしながら、ハンナの実家が横領に至った経緯を話し出した。
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