氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
336 / 805
本編

284

しおりを挟む
 リラ達は階下に降りて、サロンに顔を出すと、ジーンが声を掛けてくれる。


「デイルお祖父様と、デュラン伯父上は帰ったよ。全く……相変わらず考えなしと言うか何というか……」

「わたくしも、実の父と兄である事に、時折頭が痛くなります」

「身内じゃ無ければ関わりたく無いかな、僕は」

「まぁまぁ、そう言ってやるな。あれでも敵や怪しい奴等を見付ける事に掛けては、頗る鼻が利くんだ。まぁ、その分本能で動いてる事が多いから、多少始末が悪い時も有るが、そう言う時は、頭を使うよう、言葉で最悪パターンを思い浮かばせてやれば良い。この中で一番懲らしめられるのは、実の娘であるリリーだろう」

「ええ、お義父様。任せて下さいな。折角エドワルド様が、エヴァンス領へと足を運んで下さったと言うのに、リラを怒らせるような事をしたのでしょう?ジーン、あの二人が何を仕出かしたのか、後で詳しく教えて頂戴。晩餐の準備はもう出来ていますか?」


 その言葉に、キーツが答える。


「ええ、若奥様。既に準備は整っております」

「では、食堂に移りましょう。使用人達の分も運んで頂戴それと、エドワルド様の御者をして下さっていた従者の方にも声掛けを」


 リリーの言葉に、キーツは笑顔を見せて、直ぐに応じる。


「承知致しました。では、ご案内致します」


 キーツは侍女達に手で合図を送り、先に行かせると、ゆったりとした足取りで食堂に向かい、その通りに有る部屋を、エドワルドに対して簡潔に説明しながら通り過ぎ、食堂へと辿り着くと、扉の前で、エドワルドの従者と合流する。


「あの……私まで良いのですか?」


 オロオロとエドワルドに聞いてくる従者にエドワルドは声を掛ける。


「心配するな。良いから呼ばれたのだ。ここは貴族と使用人達の垣根が低い。お前も郷に従え」

「はぁ……」


 エドワルドの許可が出たので、一先ずホッとする。

 そうして扉を開ければ、本宅にいた使用人達が出迎え、リラに祝いの言葉と花束を贈り、エドワルドに歓迎の言葉を述べる。


「「「「リラお嬢様、ご婚約おめでとう御座います!!そして、ようこそいらっしゃいました!クルルフォーン公爵!!」」」」


 セイル家の二人に腹を立て、リラのささくれ立った気持ちが、使用人達の祝福により、癒される。

 一人一人がリラに祝福の声を掛け、エドワルドにも祝福の声が向けられる。


「あっ……有難う御座いますわ!!」


 リラは花束を潰さないように抱き締めて、幸せ一杯でエヴァンス家の晩餐を迎えられたのだった。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...