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本編

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 二月になり、王都を出る日が遂に来た。

 エドワルドはエヴァンス家を訪れて挨拶をする。

 因みにエドワルドの方は、エドワルドが乗る分と、荷馬車の二台で済んでいる上、護衛らしい護衛はいない。


「ああ、私自身剣が扱えるし、ダンやマッド、ジーン殿もいる。それなのに、私の方でも態々護衛を連れて来る必要は無いと思ったからね」

「たっ、確かにそうですが、エドワルド様は不安になりませんか?」

「大丈夫だよ。ダンもマッドも信頼しているし、私は少数人数での方が好きだからね」


 それを聞いていた双子達が、声を上げる。


「ルナ、いる~!」

「ルネも~!」


 自己主張する双子達にもエドワルドは肯定する。


「そうだな。二人の腕も信頼している。勿論リラの事も」


 その言葉に、双子達は満足感満載の様子だ。

 エドワルドは、リラに向かって微笑み掛ける。

 エドワルドは王族だ。幾ら王位継承権を放棄したとは言え、王族である事に変わりは無い。

 だが、エドワルドは王族として振る舞うよりも、自ら動き、先を切り開く人だ。

 そんな人に、信頼していると言われる事が、リラは嬉しくて仕方無いのだ。


「有難う御座います、エドワルド様。わたくし、とっても嬉しいです!」

「?私は事実を言ったまでだ。準備が出来たようだし、馬車に乗ろう。エヴァンス領内に入るまでは、リラと共に、ジーン殿も私の馬車に乗り込むようになっている。ジーン殿は世間一般では私のお目付け役だそうだよ。リラと仲が良いとも知らず、ジーン殿を仲間内に引き込もうとして、墓穴を掘ってる連中もいるらしい。エヴァンス家次期当主を悪の道に引き摺り込もうなんて、無理な事だと言うのにご苦労な事だ」

「兄様はエヴァンス侯爵の役割を、とても誇りに思ってますもの。エヴァンス家の名に傷が付く行為をなさるなんて、有り得ませんわ。皆様目が節穴なのです!」

「リラとの関係は兎も角、ジーン殿を見ていれば、不正や脳無し連中を嫌う傾向に有ると判る筈なのにな」


 エドワルドはリラの手を取り馬車に向かえば、ジーンも馬車の方に寄って来る。


「忘れ物は無いね、出発しよう」


 出発に時間を掛ければ次の休憩場所に遅れ、宿泊所に着くのが遅くなってしまう。時間は多目に取っているが、不測の事態が起きても大丈夫なように、時間を多く取るのは当然だ。早くに宿泊所に着いたら、そこでのんびりと過ごせば良いだけなのだから。

 エドワルドの馬車に、リラとエドワルド、ジーンが乗り込み、エヴァンス家の馬車には、リリーと侍女達が乗り込んだ。
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