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本編

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「この辺一帯は、主賓室からよく見えるから、リラの好む花を中心に、四季を問わず咲くように揃えて欲しい」


 エドワルドが再び庭を案内し、敷地の見取り図もダンに渡す。


「それと、こちらに行けばうまやが有る。リラも乗馬をしたければ、馬場も有るからそこでしても構わない。その奥に裏口は有るが、奥は王家所有の森だから、そちらから他人が入る事は先ず無いし、裏口には常に鍵が掛けてある。ただ、私としては、リラと相乗りして出掛けたいな」


 にっこりエドワルドが微笑めば、リラはキラキラと目を輝かせる。


「えっ、エドワルド様と、馬でのお出掛けっ!!」


 素直に喜ぶリラは、年より若干幼く見えるが、それもまた可愛いと、エドワルドは内心悶えながらも話を続ける。


「一階に執務室となる書斎、図書室を並べて配置しているから、後で案内をしよう。場所はこの辺だから、こっち側にもリラが好きな花を植えると良いよ。取り敢えず、今有る物のリストはこれだけだ。不足分や欲しい物は、昼に来る業者に頼めば良い。この屋敷にも一応庭師が一人いるけれど、今はここに作った薬草園や、ハーブを世話している。婚約者の為に庭を弄ると言ったら、物凄く喜んでいたよ」

「そりゃあそうだろうよ。これだけでかい庭が有るのに、主人は全く興味を示さないなんてのは、庭師としちゃあ張り合いがねぇからなぁ」

「それも、リラが来てくれれば解消するから、問題は無いよ。私もリラが好きな花だと、愛着が持てるだろうしな」


 そうして庭を一巡りして、屋敷に入る頃には、昼になっていた。


「昼食のご用意が出来ております。お供の方達もご一緒にどうぞ。食堂へは私が案内させて頂いても宜しいですか?」

「ああ、頼む」


 そうしてランドールが先頭に立ち、食堂へと向かう。

 因みに、今日は最低限の人数で配置しているのだが、ランドールを外せば、その殆どがエヴァンス家の使用人達だ。

 知らない屋敷でもお馴染みの顔がいれば、リラもそれ程緊張せずに済むだろうから、と言う理由も勿論有る。

 ただし、元々エドワルドの屋敷には男性の使用人達しかいない。エヴァンス家からも、リラが嫁いで来るまでは、男性の使用人達しか借りてないのだが、エヴァンス家の使用人達ならば、今更リラに恋情を抱き、リラを無理矢理連れ出そう等考える者は居ないだろうと言う思いも有るからだ。

 今更リラが、エドワルド以外の男に想いを寄せるとは思っていないし、ダンが他の男を寄せ付ける事は無いと頭では解っているが、それでも心がざわつくのだから仕方無い。

 エドワルドは自分の心に従ったのだった。
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