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本編

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 そして、リラがクルルフォーン邸を訪問する日の当日。

 リラは朝からソワソワとしていた。

 エドワルドが朝から馬車で迎えに来ると言っていたので、朝から会える事を喜んでいるのが周囲には丸わかりだ。

 約束の時間の少し前にエドワルドの馬車が到着し、リリーと共に玄関に向かえば、エドワルドが馬車を降り、先ずはリリーに挨拶をする。


「お早う御座います、侯爵夫人。今日はリラ嬢を一日お借りします。日が沈んでからお返しする事になると思いますが、ご自宅まできちんとお送りしますので、ご容赦下さい」

「お早う御座います、エドワルド様。不束な娘ですが、宜しくお願い致しますわね」

「私にとってリラ嬢は、とても愛しい女性なので、心より嬉しく思います。エヴァンス家の宝を、預からせて頂ける幸運を与えて頂き感謝します」

「わたくしも、エドワルド様のような方にリラを任せられる事に感謝しています。ほら、リラ、早くお行きなさい。エドワルド様がお待ちかねですよ。時間を無駄に使ってはいけませんわ」


 リリーに言われて、リラがエドワルドの傍に寄る。


「それではお母様、行ってまいりますわ」

「ええ、気を付けて行ってらっしゃい」

「有難う御座います夫人。では、行こうかリラ」


 エドワルドはリラの手を取り、馬車へと導く。この馬車はリラのお披露目の夜会に連れ出す為に使用した馬車と同じ物だ。

 中へと入り、それに気付いたリラは、思わず顔を真っ赤に染める。

(だだだだっ、駄目です!思っ、思い出してはいけません!!エドワルド様もそんなつもりでこの馬車を使ったのでは無いのですからっ!これからエドワルド様のお屋敷で、お庭やキッチンの入れる部屋、配置場所を考えなくては駄目なのですぅ~!)

 馬車の入り口付近で立ち止まってるリラの背後から、馬車の扉を閉めたエドワルドが声を掛ける。


「リラ、座ろう。馬車が動くよ」


 エドワルドはリラの手を引き、座席に座ると、リラを引き寄せ前回と同じように膝の上に向かい合わせに座らせる。


「ええええっ、エドワルド様?!」

「今はキスまでしかしないけれど、屋敷に着いて一通り見終わった後に、二人切りで沢山可愛がってあげるから、少しだけ我慢していて?あまり顔に出しては駄目だよ?私の家の使用人達は、最低限の人数以外は全て休暇を取らせているけれど、その少数がリラに惚れては厄介だからね。惚れた所で指一本触らせる気は無いけれど、リラの可愛い顔は、私が独り占めしたいからね」


 エドワルドの言葉に、リラは口を開く事も出来ず、真っ赤な顔でエドワルドにしがみ付く事しか出来なかった。
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