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本編

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 日付の変わる一時間程前になり、アレクシスやアナスタシアも広間へと出て来る時間なので、リラ達も挨拶に向かう。

 二人はまだ出てきていない為、広間には陛下達が出てくれば直ぐにでも挨拶出来るようにと列を作り始めているが、エドワルドはその列の横を通り抜け、リラをエスコートしたまま、バルト達やエヴァンス家の関係者を引き連れ、最前列の前にある、王族と公爵の位を持つ者の関係者だけが使用出来る空間に向かう。

 ここはテーブルもソファーも置いて有り、列よりも先に陛下達が訪れる場所なので、ここで陛下達を待つ事にしたのだ。


「あの、エドワルド様。わたくしもこちらに入って宜しいのですか?」


 シーズンオフではあるものの、それなりに人はいる。

 その為、並んでいる人達の視線が突き刺さるのだ。

 極々平凡な容姿の小娘が、こんな所にいる事自体が不釣り合いだとリラは思ってるのに、アレクシスとアナスタシアが来るまで人目に晒される事が不安でならない。

 ただ、それを態度や表情に表す事が無いので、他の人には気付かれていないだけだが。


「リラは私の婚約者なのだから、ここにいる権利が有るよ。と言うか、これからはずっと私の傍にいる事になるのだから、慣れないとね。リラの居場所は私の隣だよ。それだけは忘れないで欲しいな」

「わっ、分かりましたわ」


 エドワルドがリラに甘く微笑み掛けるので、リラは表情に出さないよう、気を付けるしか無い。

(えっ、エドワルド様、もう少し自重なさって下さい~!嬉しくて、締りのない顔になってしまうじゃないですかぁ~!!)

 人前!人前!!と、呪文のように何度も心の中で唱え、何とか平静を保つリラ。

 そんな事をしていれば、アレクシスとアナスタシアが広間に現れ、真っ直ぐこちらに向かってやって来た。

(シアお義姉様、物凄く綺麗です!!あんなに綺麗で可愛いお義姉様と仲良くなれたなんて、今でも不思議で仕方有りません!お義姉様の為にも、わたくし、失敗なんてしませんわ!!)


「エヴァンス侯爵令嬢、私がドレファンに遠征している際、我が妃の身を案じ、優秀な者達を派遣して頂き感謝する。中には、妃に悪さをしようとした国賊も幾人か捕らえてくれたそうで、我が妃が害されずに済んだ事を、心より礼を言う」

「わたくしは当然の事をしたまでですわ。差し出がましいとは思いましたが、王妃様に何事も無く済んで良かったと思っています」

「まぁ、王妃だなんて他人行儀な言い方はお止め下さい。わたくし達は、義理とは言え、もうすぐ姉妹になるのですから。わたくし、リラ様のような妹が出来る事を、とても嬉しく思っていますの。ですから、文通でも書いていた通り、シアお義姉様と呼んで下さいな」


 アナスタシアが周囲に聴こえるように、よく通る声でにこにこと微笑み言い切った。
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