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本編

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「でも本当、勘弁して下さいよ……。貴族の旦那達の前で言うのも何ですが、貴族なんて面倒臭い事ばっかじゃないですか。俺は金が有っても地位を買いたいとは思わないですね」


 気楽が一番だし、仮に貴族連中に罪を着せられた場合は国を出れば良いと考えてるダンからすれば、地位等は重石でしかない。

 今でこそ、守るべき存在が有るが、貴族で無いからこそ、地位に囚われず、好きなように動けるのだ。


「俺は今の生活が気に入ってるんで、大恩有るリラ嬢ちゃんの側で働かせてもらえりゃあ充分なんですよ。リラ嬢ちゃんの命令なら聞きますがね、どうでも良い連中の相手なんざごめんですよ」

「「一番、リラ様~♪」」


 リラの作った、残り少ない手作り菓子を食べながら、ご機嫌な様子で双子も声を出す。


「こら、双子。あんま食い過ぎると、夕食が食べ切れなくなるぞ」

「「えぇえ~、駄目ぇ~?後ちょっと~」」

「ルナもルネも少食だから、食事はきっちり取らないとね。どうせなら、双子達の腕前を、バルト殿にも見て貰えば良いのでは?外はもう暗いので、ダンス室を使うと良いよ」


 ジルギリスの提案に、双子達は食い付いた。


「「やる!」」

「公爵様との話はもう良いのか?」

「「ん。今度!」」

「分かった分かった」

「「百人、負けない!弟子、一番!!」」

「ああ?」


 ダンに通じなかったようなので、双子達はアイザーク語で言い直す。


『『ダンが教えた他の百人には負けない!弟子の中で一番の強さを目指すからね!!』』

「張り合うな張り合うな。俺が一番時間掛けて教えてんのは、お前等二人に、間違いねぇからな」

「……もしかして、貴方もアイザーク語を理解しているのですか?」


 ダンがニヤリと笑ってその問いに答える。


『まぁ一応?双子の面倒見るからには、多少なりとも覚えた方が便利だからなぁ』


 アイザーク語で返答するダンに、改めてエヴァンス家の基準レベルが高い事を、バルトは思い知らされた。


「「ダン、行く!手合わせ~!」」


 双子が左右からダンの手を引っ張る。


「分かった分かった。急がなくても逃げやしねぇよ。公爵様、案内しますんで付いて来て下さい」

「はっ、はい」

「私も、二人とダンの実力を、この目で見てみたいから、付いて行っても良いですか?」

「ああ、どうぞ」

「リラ、付き合ってくれる?」


 エドワルドがリラにも確認し、リラが頷くのを待つ。


「じゃあ行こう」


 エドワルドは残ってる菓子を摘まんで空にして、席を立ち、ダン達の後を追った。
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