氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

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「そもそも、傭兵と仲の良い関係を築いてる貴族なんて、極々少数ですよ。俺がこの国に来て受け入れて貰ったのはエヴァンス家だけです。絡まれてる貴族を助けても仲間だろうとか、お前も脅す気だろうとか、とんだ濡れ衣ばかりでしたしね」

「しかし、ダン殿の噂では、あちこちからの並み居る貴族の士官話を蹴ったとか、実は、他国の貴族だったとか、王宮兵士を百人斬りしたとか色々有りましたよ?」


 バルトの言葉に、ダンは顔を引き吊らせる。


「誰だ、んなデマ流しやがった奴は……。奴ですか、マーウ様ですか、あの狸!!俺は貴族所か、旅芸人の母と傭兵の父から生まれた平民以前に流浪の民ですよ。士官だって、マーウ様本人と当時の近衛団長……って言った所でこの二つは同じ場所ですし、何人かが声を掛けて来たのだって、その中の何人かは俺を蔑んでた奴で、マーウ様に気に入られているからって理由で、『あの時は気が動転していたが、今から取り立ててやろう!』とかって偉そうに言って来るから、マーウ様に直接『不快なお貴族様が来たので帰ります』っつってその日はエヴァンス邸に帰った事がある……ぐらい、で……って、もしかしなくても、あれか。他国の貴族ってデマの元は……。翌朝、マーウ様が立派な馬車でいきなり迎えに来て、無理矢理詰め込まれた挙げ句、近衛団長だけでなく教えてた近衛達に王宮前で整列されてた事が有ったわ。薄ら寒いから、二度とすんなっつった事が有ったが、あの一度っ切りのあれが原因か……」


 あの狸……わざとやりやがったな……。とダンがブツブツ呟いている。

 そして、ふと思い立ち、ジルギリスに聞く。


「ジルの旦那、知ってたでしょう……ってか、もしや首謀者?」

「一応ね。でも、あれ以降ダンに付き纏う馬鹿は消えたよね?あいつ等、『私の家に士官させようと思ってたのに、横取りした!』なんて大嘘並べて、『こっちが先だから、ダンを返せ!』なんて都合の良い事を言い出したからね。助けて貰って置きながら、偉そうにする阿呆には、あれぐらいの仕返しは当然です。あいつ等の慌てふためく顔と言ったら、見物でしたよ」

「「百人、ダン、斬った?!」」


 双子達がウズウズキラキラとしながらダンに聞く。


「いや、百人っつうか、斬ってねぇよ。俺は木の棒で相手したからな。それにそんなにはいなかったと思うぞ?」


 因みに、今の近衛団長もこの時新人に近い状態だったが、ダンに指導して貰った一人だ。

 この前、アナスタシアの護衛に付く際、王宮の近衛団長が昔の教え子とは知らずに挨拶に行ったら、昔指導して貰った者です!是非、久し振りの手合わせと、ご指導を宜しくお願いします!!と言われ、世話になるから仕方ないと、手合わせや指導をしたが、その後も注目度合が凄かったのは、昔の噂も原因の一つかとダンは気付いた。
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