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本編

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「退位した国王は、自身の父の日誌を持っていて、葬儀の時にその日誌を入れて貰うように王位を継いだ息子かエヴァンス家の当主に頼むんだ。だから棺に入っているのは本人の物ではないけれど、父の想いと共に、眠ると言う意味合いを籠めているらしい。だから王家には国王の日誌が保管されていない為、その存在をあまり知られていないが、棺に入れている事を知る者達でも、本人の物だと勘違いしているのかも知れないな」


 エヴァンス家では、歴代当主の日誌が残っているが、王家の歴代の国王が残すとなると、王宮は人の出入りが激しく、厳重に管理をした所で他者に見られたり盗まれたりする可能性がある為、棺に入れる事になっている。

 ディーランは火葬なので、燃やせば奪われる事はないからと、棺に入れる事にしたのだろう。


「この日誌はジルギリス殿に渡す前に、先ずは兄上達に渡す事を、ジルギリス殿本人から了承を得ています。レオンを唆した馬鹿な連中は、公には裁く事は出来ませんが、だからと言って、見逃す訳にはいきません」

「勿論ですわ。こんな物を、あの可愛い可愛いリラ様に送った馬鹿息子ではありますが、余計な事を吹き込まされていなければ、もう少し真面な書簡を送ったでしょうし、それにバレないだろうと王家を嘗め切っているお馬鹿さん達を放置して置いても、碌な事になりませんもの。証拠が無いと嘗め切っているのならば、ここは別の事で制裁を下すべきでしょう。ですが、一応その彼等にもレオンに何を言ったのか、問い質す必要は有りますわ。勿論、レオンが出したような書簡では無く、正式な物で」

「これと、これは、多分まだ爵位を譲渡されていない息子の方だな。後、これは男爵を名乗っているが、長男では無いだろう」


 アレクシスがレオンの日誌を見て、エドワルドに話し掛ける。

 エドワルドは、正式な訪問者の記帳が載っている書類もちゃんと持ってきていた。

 そこでレオンの日誌と同じ様に名乗っているのなら、王太子に対して身分を偽っていた事になるので、充分不敬罪に問える。


「ああ、こちらも同じように名乗っているようですね」


 疚しい事が有る者は、時に身分や自分の名を隠そうとする場合が有る。正式な訪問記録に残ると言うのに、名前だけならばバレないと思っているのだろう。


「先ずはレオンの事を始めに聞き出して、レオンには裏で立ち会って貰いましょう。どうしますか?禍根は年内に済ませるか、年明けに済ませるか」

「レオンに吹き込む事が出来たのならば、王都にいらっしゃるのでしょう?ならば年末のパーティーで、わたくしとリラ様が公式の場で親しくし、驚かせて差し上げましょう」


 アナスタシアは顔に似合わず黒い笑みを浮かべた。
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