268 / 805
本編
216
しおりを挟む
レオンは気が抜けたのか、その場に座り込む。
「おいおい、人前で王太子様が気ぃ抜くな。そういった油断や隙を晒すって事は、弱味を握られんのと同じだぞ。そういうのは時間を掛けて築き上げた、信用の出来る相手の前でだけにしろや。間違っても、初対面に晒すな。人には裏も表も有るんだ、騙されても文句は言えんぞ?社交や外交ってのは、時に騙し合いに発展する。平和ボケしてっと食われるぞ。噂なんぞは相手の一部でしか無い。下手すりゃ大嘘だって事も有るんだからな。自身が冤罪で罪人作り出したくなけりゃあ、ちっとは先を考えて動け」
ダンがレオンの手を取り立たせる。
「俺等にそんな気はねぇが、中にはお前を、事故に見せ掛けて殺そうとする奴だって出てくるかも知れねぇんだ。知らん奴を迂闊に近寄らせんな。お前と似たような年のあの双子だって、お前を簡単に殺す技量は有るんだぞ」
驚いたレオンがマジマジと双子達を見る。
「「必要ある、殺る」」
レオンには、いつ出したのか分からないが、双子達のその手には短刀が握られていた。
「無いから!そんな必要!!」
大慌てでダンの後ろに隠れるレオンを見て、ついついリラが笑う。
「ふふふっ、大丈夫よ。王太子様は二人の大好きな、王妃様の息子ですもの。わたくしに危害を加える素振りさえ見せなければ、何もしないわ」
笑うリラを、レオンがマジマジと見て、その顔が徐々に赤く染まっていく。
(笑わない、人だと聞いていたのに……)
「?……王太子様?お身体の調子が悪いのですか?」
(王族や公爵が良いのだと聞いてたけど、それなら私だって……)
熱に浮かされたような感じでリラを見てくるレオンにリラは手を伸ばし、額に触れようとしたその時、人払いをした扉が突然音を立てて開く。
リラが手を引っ込め、扉の方を見ると、そこには息を切らせたエドワルドの姿があった。
そしてそれを見たリラは、エドワルドが見惚れたあの笑顔を向ける。
「エドワルド様!」
レオンは我に返り、その目を疑う。
氷結の毒華と呼ばれるリラが、とても嬉しそうにエドワルドを見て微笑んでいる事と、何事にも動じない、あのエドワルドが息を切らせてここに来た事にもだ。
レオンにとってのエドワルドは、完璧でミスの無い、どんな難題でも、全く動じる事の無い、文武両道、完全無欠の叔父上だ。
王宮内を走るなんて、絶対に無いと思っていた人でもある。そのエドワルドが、息を切らせてレオンを睨み付けてくるのだから、驚くのも無理は無い。
「……レオン、これはどういう事か、詳しく説明をしなさい」
その声は、レオンが今まで一度も聴いた事が無い程低く、冷たく、寒さを感じて背筋が冷えた。
「おいおい、人前で王太子様が気ぃ抜くな。そういった油断や隙を晒すって事は、弱味を握られんのと同じだぞ。そういうのは時間を掛けて築き上げた、信用の出来る相手の前でだけにしろや。間違っても、初対面に晒すな。人には裏も表も有るんだ、騙されても文句は言えんぞ?社交や外交ってのは、時に騙し合いに発展する。平和ボケしてっと食われるぞ。噂なんぞは相手の一部でしか無い。下手すりゃ大嘘だって事も有るんだからな。自身が冤罪で罪人作り出したくなけりゃあ、ちっとは先を考えて動け」
ダンがレオンの手を取り立たせる。
「俺等にそんな気はねぇが、中にはお前を、事故に見せ掛けて殺そうとする奴だって出てくるかも知れねぇんだ。知らん奴を迂闊に近寄らせんな。お前と似たような年のあの双子だって、お前を簡単に殺す技量は有るんだぞ」
驚いたレオンがマジマジと双子達を見る。
「「必要ある、殺る」」
レオンには、いつ出したのか分からないが、双子達のその手には短刀が握られていた。
「無いから!そんな必要!!」
大慌てでダンの後ろに隠れるレオンを見て、ついついリラが笑う。
「ふふふっ、大丈夫よ。王太子様は二人の大好きな、王妃様の息子ですもの。わたくしに危害を加える素振りさえ見せなければ、何もしないわ」
笑うリラを、レオンがマジマジと見て、その顔が徐々に赤く染まっていく。
(笑わない、人だと聞いていたのに……)
「?……王太子様?お身体の調子が悪いのですか?」
(王族や公爵が良いのだと聞いてたけど、それなら私だって……)
熱に浮かされたような感じでリラを見てくるレオンにリラは手を伸ばし、額に触れようとしたその時、人払いをした扉が突然音を立てて開く。
リラが手を引っ込め、扉の方を見ると、そこには息を切らせたエドワルドの姿があった。
そしてそれを見たリラは、エドワルドが見惚れたあの笑顔を向ける。
「エドワルド様!」
レオンは我に返り、その目を疑う。
氷結の毒華と呼ばれるリラが、とても嬉しそうにエドワルドを見て微笑んでいる事と、何事にも動じない、あのエドワルドが息を切らせてここに来た事にもだ。
レオンにとってのエドワルドは、完璧でミスの無い、どんな難題でも、全く動じる事の無い、文武両道、完全無欠の叔父上だ。
王宮内を走るなんて、絶対に無いと思っていた人でもある。そのエドワルドが、息を切らせてレオンを睨み付けてくるのだから、驚くのも無理は無い。
「……レオン、これはどういう事か、詳しく説明をしなさい」
その声は、レオンが今まで一度も聴いた事が無い程低く、冷たく、寒さを感じて背筋が冷えた。
58
お気に入りに追加
9,275
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる