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本編

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(これぐらい言って置けば、さすがに懲りて、次からは気を付けるわよね?)

 リラは無表情のまま、そう思っていると、レオンが震えた声を絞り出す。


「かっ……返して下さい……」

「そう言われて返す阿呆がいると思うのか?」


 ダンが呆れた声を出す。


「そもそも相手がどんな人間か、ある程度調べたんだろう?そんな相手にあんなお粗末な物を送る事に、どれ程の危険を孕むか、先ずは考えて送れや。一度や二度の失敗なら大丈夫ってのは、通じる相手と通じない相手がいるんだよ」

「「失敗、死ぬ、戦場。知らなかった、通じない」」


 似たような年の双子達も、容赦無く言葉にする。

 もう一人いた侍女は何も言わないが、レオンに敵意を向けているのは肌で感じられる。


「ごっ……ごめんなさい!お願いします、返して下さい!」

「返せないわ」

「そっ、そんなっ……」


 レオンが泣きそうな顔でリラを見返す。

 リラが溜め息を吐いて、そんなレオンに事実と理由を述べる。

 ちゃんと謝罪と懇願をしたからなのだが、理由を勘違いし、泣きそうになってるレオンを嗜める為もある。


「この中の書簡は、王太子様の教育係りでもある、わたくしの父に預けましたわ。だから返せません。本当に悪用する人の手に渡ったら取り返しの付かない事になるのですから、充分に気を付けて下さいな。社交界では小さな事が命取りになるのですよ?泣いて許されるのは、子供の悪戯で許される幼児ぐらいです。良いですね?」


 リラの言葉に、最初は瞳に涙を溜めたまま、吃驚しているが、少しずつ状況が呑み込めてくる。

 詰まる所、リラが書簡を悪用する気は無く、教育係りであるジルギリスの手に渡ったと言う事。

 レオンはジルギリスに、恐いと言う印象等無いのでホッとした。それは翌日以降の恐怖教育で、今まで見せていた表向きの顔では無く、裏の顔、つまりジルギリスを侮った事の有る連中が体験した恐怖を少しだけ垣間見る事になり、ガラリと印象が変わる事になると知らない為だ。

 そして、父であるアレクシスが、どうしてかジルギリスを苦手とし、怒らせたりするなよと言っていた意味を正しく理解する事になるのだ。

 因みに、レオンが恐怖教育を受けずに済んでいたのは、アレクシスが、幼少期のあれ・・はトラウマになるから、せめて学院卒業後か、レオンが見過ごせない失敗をやらかした時にして下さい!と、頼んでいたからに過ぎない。

 何事も無ければ、トラウマになる程の恐怖教育はされずに済んだであろうに、選りにも選ってリラにあんな書簡を出すからだが、身内で良かったと言えるだろう。これが他国の姫君で、政略婚だった場合、子供の悪戯で済ませる問題では無くなるのだから。
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