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本編

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 当時は、先代もジルギリスも王都にいて、ジーンも学院、ダンはまだ、庭師に転職したばかりな上、マーウィンがダンに王宮の近衛団長と手合わせさせたりした為に、リリーとリラを領地に送った後は、王都に戻って来て近衛達を鍛えて欲しいと、団長直々に頼まれていた。

 エヴァンス家の使用人達は領地、王都、学院に多く別れ、護衛や数は足りていたものの、一番手薄だった時期で、元凶の子息がそれまで乱暴だったと言う事も無かった為に、見過ごされてしまったのだ。

 エドワルドからすれば、ずっと不思議だった事の一つ、何故気付きそうなジルギリスが全く気付かなかったのだろう?と言った疑問が解けた瞬間だった。

 ジーンの不在は聞いていたが、まさかジルギリスや先代、ダンまでもが不在だったとは、エドワルドは思いもしなかっただろう。


「父上……貴方と言う人は……」

「いやいや、待て待て!私はリラちゃんをジルの子供として可愛がっておったし、他意は無い!!それに今でもリラちゃんとは文通相手だぞ?!」

「父上?若い未婚女性相手に、何をやっているんですか?」


 エドワルドから、怒りと嫉妬の冷たいブリザードが吹き荒れる。


「エドワルドは羨ましいだけだろう?リラちゃんは私にとって、娘のような子だ!それが本当に私の義娘になるのだから、喜んで当然だろう!」

「そこまでお気に入りならば、何故エドワルドとエヴァンス令嬢を引き合わせなかったのですか?」


 話を聞いていたアレクシスがマーウィンに聞いてみる。

 マーウィンが関与した訳では無いが、元凶の親達が、エヴァンス姓の男性陣と、凄腕のダンが不在の領地に何度も押し掛けて来て、元凶の馬鹿息子が、リラを虐めて笑顔を奪い、コミュ障の発症と男性恐怖症になり掛けていたリラに、私の息子と会ってみる気は無いかと言える程、マーウィンも無神経では無い。

 そもそも、親しくも無い相手の、当主不在時のアポ無し無断訪問等、常識外れもいい所でそれをする馬鹿がいようとは、思っていなかったのである。

 そして、その頃エドワルドは、既に女嫌いの兆候が垣間見えていたので、リラと会わせて、万が一リラに冷たくしよう物なら目も当てられないと思ったのだ。


「本当はリラちゃんと引き合わせて、エドワルドの嫁にと企んでいたが、それ所じゃ無くなってな。渋々諦めたのだが、まさかエドワルドがリラちゃんを捕まえるとは思わなかったぞ!」

「マーウ?そんな事を企んでいたのか?」


 つまり、マーウィンがしょっちゅう押し掛けずに、ジルギリスの許可も取っていれば、リラが領地に帰る事は無く、もっと早くにリラと会えた可能性もあった、と。

 エドワルドは、その後の休憩時間をマーウィンとの手合わせに使い、マーウィン相手に本気で斬り掛かったのだが、マーウィンの方が腕が良かった為に、帰ったらダンに訓練を付けて貰う事を決意した。

 因みに、ジルギリスとエドワルドの関係は一応良好である。リリーが手紙でエドワルドの事も何か書いていたのだろう。

 険悪になる事も無く、無事に王都へと帰って来たのだった。
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