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本編

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 愚王と重臣を引き摺らせながら、道の途中に出会う重臣を捕縛し、ドレファンの兵士に重臣を全部連れて来いと言いながら、ジルギリスの案内で、過去のドレファン国王断罪の広間に到着する。

 重臣が来る毎に捕縛を繰り返し、大半が集まった頃には煩くもなるが、ジルギリスが、あまり煩くすると、ドレファンの国王同様に去勢するよ?と笑顔で告げると、途端にその場が静まった。

 それを見て、ジルギリスは薄情な重臣だよねと、皆に聞こえるように呟いてから、一人壁に向かって歩き出す。


「確か、ここだったかな?」


 ジルギリスが何やら壁を弄っている。

 すると、壁の一部が音を立てて動き、ポッカリと穴が開く。


「一応記載されてた通りで、ドレファンの馬鹿が移していなければ、ここに有る筈なんだけど……っと。ああ、大丈夫みたいだね」


 ジルギリスはその中から、厚みのある本を取り出し、数ページ捲った後に、一番最後の部分を開いて確認する。


「ジル、それはもしや?」


 マーウィンの問い掛けに、ジルギリスはあっさり頷く。


「うん。これがドレファンの機密文書と当時の記録帳。ここに保管しろとは言ったけど、まさか子孫にこの存在を教えなかったとはね」

「「「ななななっ、何故そんな物がそこに?!?」」」

「場所を決めていた方が、紛失する可能性が低くなるからだよ。そんな事すら分からないから馬鹿だと言われるんだよ」

「よく知っていたな、そんな場所まで。何かに記載されていたのか?」


 マーウィンの問いに、ジルギリスが答える。


「代々エヴァンス家当主が記している日誌に載ってました。ウチの子が一時、歴代の日誌を読み漁ってまして。子供が読む物に、目を通さない親はいないでしょう?そこの日誌に記載されていたんですよ」


 エドワルドは、ジルギリスの言葉を聞いて、それはどちらの方だろうかと思う。リラかジーンか、多分その両方かも知れないが、こういう言い方をしていたら、普通はジーンの事だと思うだろうが、リラの優秀さを知る者は、リラの事も入っているかも知れないと気付くのだろう。

 リラが本を読む姿を想像し、少しだけ心を和ませる。


「さて、そこの愚王だと、大事な書物を汚しそうだし、そもそも文字を読める頭脳が有るのかと疑いたくなるから、ディーランを襲撃した実行犯の捕虜君に読んで貰おうか。声を出して、ここにいる馬鹿共に聞こえる声で読みなさい。理解出来るようにゆっくりと、はっきりとね」


 縛られた捕虜の前に本を開き、読み上げさせる。

 その本にはディーランに戦を仕掛けるも、二度に渡り大敗を、その内の一つは千以上の戦力を、たった三百程の兵に打ち負かされたとの記載まで有り、ドレファン側は驚き過ぎて声も出ない様だ。

 更に読み進めて、王城まで攻め落とされて、ディーランに全面降伏状態な上に、当時のドレファン国王の処刑が、家臣達や後継者の前でされた事、当時の会話も詳細に載せている。勿論あの機密文書が作成された事も。その記録帳にはこう書かれていた。何が有っても、ディーランには絶対に手を出すな。あれは鬼や悪魔、死神と言った類いで、人間じゃない。交渉も無意味だ。死にたくなければ絶対に手を出すな、と。 
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