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本編

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 ジーンは、指定した四人以外の侍女が出て行くのを見届けて、隠し通路に潜んでいた内の男二人を呼び寄せ、他は確実に人がいないようにと見張らせる。

 そのジーンの行動に、不審感しか抱けなかったアナスタシアが、ジーンを睨み付ける。


「……ジーン様?」


 その声には警戒心が含まれている。

 アナスタシアにとって、ジルギリスは知っているが、ジーンとは殆ど接触した事が無いのだ。


「ご心配無く。謀叛と言った物では有りません。この者達は、エヴァンス家の者達です。さぁ、挨拶をしなさい」


 ジーンが声を掛けると、地味な感じの無表情な侍女が一人、先ずは前に出て、完璧なお辞儀をした。


「初めまして、王妃様。わたくし、ジルギリス=エヴァンスの娘で、リラ=エヴァンスと申します。この度、陛下不在の時に、わたくしのような者がお邪魔して、大変なご迷惑をお掛けしますが、わたくしと、王妃様の身を守る為、とご了承下さいますようお願い申し上げます」

「まぁ!貴女があの?!ですが、お聞き及びした容姿と随分違っておられるような……」


 それもその筈。リラはウィッグを付け、別人メイクで王妃の前にいるのだ。


「レベッカ、髪を」

「はい、お嬢様」


 レベッカは返事をして、リラのウィッグを取り外すと、その下からは見事な青銀色の髪が、綺麗に纏められていた。


「まぁ!確かにとても綺麗な青銀色ですわ。それで、貴女とわたくしを守る為とは、どういう事でしょうか?」

「正確には、わたくしと、わたくしの母であるリリー=エヴァンスと、王妃様との三人を守る為に、狙われ易いわたくし達を纏めて、警護を強化した方が良いと判断されましたの」


 因みに、それを提案したのはリラ本人だ。

 エヴァンス家にてお仕置き中の兵士からの噂を聞いたリラが、それならば王宮に移り、固まった方が警護も纏めて強化出来るのでは?と言ったからだ。

 勿論、あのままエヴァンス邸にいても問題は無いと、自信を持って言えるが、アナスタシアの方に不安が有るからだ。

 近衛達では力不足と言う訳では無いが、可能性の芽は潰すに限る。


「ジルギリス様の奥方様?」


 残った侍女をアナスタシアは見ると、その侍女はにっこりと笑顔を見せ、こちらも完璧なお辞儀をする。


「初めまして、王妃様。わたくしがジルギリス=エヴァンスの妻で、この二人の母であるリリー=エヴァンスですわ。突然の訪問、大変申し訳なく思っておりますが、王宮内でも少し不穏な情報が有りましたの。アナスタシア王妃に懸想する男性が、陛下のいない隙に無理矢理手中にし、脅そうと言うような類いの物で、王妃様の侍女が手引きすると言った情報も有りますので、ジーンが他の者達に退出を促した次第ですわ」


 そして、お茶を運んで来た侍女は、元々王宮に潜入していた、エヴァンス家の使用人だったのだ。
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