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本編

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「こっちは何も異常は無かった?」


 リラを腕の中へと収めたエドワルドは、ダンにそう問い掛ける。


「あ~、アポ無し貴族が数名来たが、問題無く歓待したぐらいだ。マッド達が喜んで相手してたぞ。ジーン坊っちゃんが帰れない時なんて、今に始まった事じゃねぇのになぁ」


 マッド達が喜んで相手をしたと言う事は、夜会の夜に現れた屑共と一緒の目的と言う事かと、エドワルドは目を細める。


「……その者達の身元は?」

「心配すんな。直ぐに吐いたが、王宮に連絡して引き取って貰った」

「我が家を襲撃するなんて、考え無しにも程がありますわ。いくらお父様と兄様がいなくても、我が家には優秀な使用人達とマッド達、それに、狩猟犬がりますもの。それに、庭にも沢山の罠が仕掛けられているのです。そう易々と、入れはしません」


 リラがエドワルドに抱き付いたまま、エドワルドを見上げてくるが、その顔は少し不満そうで、猫が構えと言ってる顔に似ている気がする。

(相変わらず可愛過ぎる!そして、相変わらず柔らかくて、リラの匂いに癒される!!)

 エドワルドはリラを強く抱き締め、久々のリラの匂いを堪能する。


「リラに何事も無くて、良かった」

「エヴァンス家は鉄壁です!お母様目当ての貴族達は、とことんやられて当然です!」


(確かに夫人も綺麗な女性だが、その中に、自分も含まれていると言う事に、いつ気付いてくれるだろうか?まぁ、それは追い追い言い聞かせていくとして……)


「リラの作戦は見事だったよ。こんなに早く片が付くなんてと、皆が皆喜んでいたぐらいだ。中洲に取り残された男も、中心人物の一人だったようで、逆らう事無く色々と喋ってくれているよ」

「中心人物の一人?軍の大物か何かか?」

「ああ、それは流された方にいたらしい。後、第一王子も」

「……負け戦に王子起用って……」

「彼等曰く、軍神であり、太陽神でもある初代ドレファン国王の血を継ぐ者が参加して、負ける訳が無いそうだ。濁流に呑まれたけれどね」

「俺は他国民だからよく分かんねぇんだが、その、軍神だの太陽神だのってのは何だ?」

「ああ、初代ドレファン国の国王は、元々小さな部族の戦士だったらしく、その男が数多の部族を打ち倒し、今のドレファン国の基礎を作ったらしい。その男が死んだその日が日食だったらしく、太陽が陰っただの、神の怒りだだのと言われて神格化され、初代の血筋は神の末裔だと言われるようになったそうだが、周りはちやほやして、咎める者がいない為、愚王が多く、ディーラン国の豊かな土地を奪おうと、度々いざこざを仕掛けて来るが、未だ一度も勝った事が無いと言うていたらくっぷりだ」

「いやいや、ディーランに負け続けてる時点で気付こうや!」

「向こうの国王は負ける度に、部下が悪い民が悪いと責任転嫁しているからな。七十年前の戦争でも最初はそう言っていたから、次期国王の前で毒殺させたらしい。ディーランは国王すら殺せるぞと教えたつもりだが、子孫にすら口伝しなかったみたいだな」
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