上 下
195 / 803
本編

144

しおりを挟む
 グラントが再度寄って来て、ジーンに貰った暗号化書面の解読した書類を渡すと、エマが、先程のリラの指示した簡略図に、場所も記していたので、その確認もしておく。

 リラはエドワルドにグラントの写しを渡し、お願いする。


「これは、エドワルド様からローズウッド公爵様にお渡しをお願いして頂けませんか?エドワルド様の方が適役ですし、わたくしが関わっている事は内緒にして下さいね?小娘の指図なんて受けたくはないでしょう……し……。……もしかして、わたくし、出しゃばり過ぎました、か……?」


 後半になればなる程、落ち込むリラに、エドワルドは否定する。


「リラが出しゃばったなんて思っていないよ。それにバルト殿は小娘に指図された等と思うタイプでは無いから知られても問題無いよ。それこそ、良い令嬢を伴侶に選んだと褒めて貰えると思う」


 バルトは大した内容の無いお喋りなだけの女性達は苦手だが、賢い女性には好感が持てる。リラは既に好感を抱かれているのでリラの指図だと知れば驚きはするだろうが、嫌悪感は抱かないだろう。


「……エドワルド様はやっぱり奇特ですぅ。キルロス兄様なんて、細かい事だけを覚えている女や、頭の回る女なんて、男に嫌われるだけだぞって言ってらしたもの……」

「キルロス?」

「ああ、母方の従兄だよ。あの男……リラにそんな事を言ったのか。あれの言う事は気にするな。多分リラが、前にキルロスと見た女性と違うみたいな事を指摘したんだろ?あの男はどちらかと言うと女好きだから、覚えられてると困るんだよ。今は結婚してるけど、次男だから婿入りだし、過去をバラされては困ると思ったんだろう。その条件で男が女を嫌うは、男に度量が無い器の小さい男や、女を見下し、自分の馬鹿さ加減を隠したい頭の悪い男達だ。まぁ、世の中そんな馬鹿や屑が多いから、後ろめたい事がある男に嫌われると言うだけだ。それで言うと、あれは後者だな。私もエドワルド殿も、その条件には当て嵌まらないから安心しなさい。キルロスには少しお仕置きが必要かな……」


 お仕置きと言う言葉に、リラが慌てる。


「あああのっ、でも、キルロス兄様は一般論を仰っただけですし、わたくしもそれ程気にしていた訳では無いですから!その後デューク兄様が、後ろからガツンと拳骨を落としていましたから!」

「なら、良いか。デュークならきっとその後数時間説教してるだろうし。ああ、デュークっていうのはキルロスの兄で、右隣のセイル侯爵の当主だよ」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

最弱な彼らに祝福を~不遇職で導く精霊のリヴァイバル~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:9

子供の頃結婚の約束をした男の子は魔王でした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:326

1人の男と魔女3人

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:1

祭囃子と森の動物たち

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:1

太陽と月

ko
BL / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:250

段級位反転 ~最強の魔導士は最弱に成り下がる~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:2

処理中です...