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本編

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 出来上がった地図を並べ、大昔の地図と見比べる。と、そこにグラントが寄って来た。


「六百年程前の昔には無かった河川に印を付けていっても良いですか?!後、大昔の川幅も!」

「序でに地形図の方にも過去の浸水被害の場所も書き込んで置け」

「やったぁ~♪」


 直ぐに地図へと飛び付き、先程の資料から得た追加情報を書き加えていくグラント。


「出来ました!そんじゃあジェフの暗号化書面の続きを解いてきます!」


 どうやら、書き込みの仕事を他に譲りたくなかった為に、寄って来たようである。

 まぁ、エヴァンス家ではよく有る光景なので、誰も気にせずに放って置く。


「大昔の地図は兎も角、まるで見て来たような詳細な地図ですね。この地図はどこから?」


 疑問に思っていた事を、エドワルドは聞いてみる。これ程詳細な地図をエドワルドの前で出すのなら、エヴァンス家の役割を知っている為、聞いても誤魔化される事は無いだろうと。

「ローズウッド公爵領は、ドレファン国と接しているからね。一番にあの国が攻めようとする場所だから、現地で調達した地図と、実際に商隊や商人に紛れ込んで見て来た者達の地図情報も書き加えられている。と言うのは建前で、エヴァンス領含む、ディーラン国の地図作りに、執念を燃やしている者達がいるだけだ。これはエマ達の地図作りに対する情熱を、エヴァンス領内に留めるのは惜しいと、国内の精巧な地図を作らせた結果だ。まぁ、まだ全てが完成した訳では無いが、陛下には写しを全て提供しているよ」

「……それは、クルルフォーン公爵領のも有る、と」

「見るか?」

「……是非」

「エマ、取って来てくれ」


 エマが保管場所に取りに行き、エドワルドにクルルフォーン公爵領の地図を渡す。

 それを見せられたエドワルドは絶句した。何故なら、エドワルドが知るクルルフォーン公爵領の詳細な地図と、ほぼ同じような物が出て来たからだ。


 これ程詳細な地図を保管しているエヴァンス家を敵に回そう物なら、その時点で負けたも同然だ。道所か地形まで把握されているのだ。しかも、一つの領地だけでは無く、国内全体と言うのだから恐ろしい。

 高が一領主が一国を相手に勝ち目は無いと思う貴族は多いだろうが、この現状を知った上で、果してどれだけの者達がそう言い切れるだろうか。

(兄上がエヴァンス侯爵家に対して、あれ程の怯えを見せていたのは、こういった理由もあるのか……)

 アレクシスがエヴァンス侯爵家の人間達を苦手とするのは、ジルギリスによる幼少期の恐怖教育の所為だが、エヴァンス家の役割を知らされ、エヴァンス家の高い能力を、時折こういった形で見せ付けられて、敵に回したら確実に殺されるという事に、現実味を感じさせられているなら、尚更怯えないほうがおかしいだろう。
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