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本編

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 朝の会議でその一報が入った瞬間、その場の誰もが耳を疑った。


「報告します!!隣国の者達が国境を越え、ローズウッド公爵領のルーデン地方にある村を襲っているそうです!被害は最小限で済みましたが、未だに国内に留まっているようで、至急応援を寄越して欲しいと通達がありました!」

「バルト殿は?」


 アレクシスの問いに、伝令が答える。


「その襲撃を防いだのが、バルト殿のようです。村で、怪しい人影を目撃したとの情報が入り、警戒を高めていたそうです!」


 隣国であるドレファン国は、七十年程前にアウラ地方で大敗し、数日後に挑んだ大規模な戦闘でも大敗を決し、ディーラン国に多大な賠償金を支払い、和平を結んだ国である。

 ドレファン国は、どちらかと言えば不毛の地が多く、ディーラン国程の豊かさは無い。その為、ディーランの土地を奪おうと戦争を仕掛けて来たが、敗戦に終わり、莫大な借金を背負う事になったのは自業自得と言えよう。

 ディーラン国は大国だが、今以上に国土を広げようと思った事は無く、愚策を通す王もいない。何せ、エヴァンス家と言う見張り役がいるのだ。迂闊な事をして始末されたくは無いからだ。


「直ちに援軍を出せ。ドレファン国は何か言ってるのか?」

「いえ、それが全く……」

「どうせ上の預り知らぬ事、等と言いそうだな、あの国は」


 歴史を紐解けば、ドレファン国は度々ディーラン国に対していざこざを起こしている。

(あの国……。一度きっちり締める必要が有りそうだな。りにってこの時期に、私に対する嫌がらせに思えてならない。二度とこの国にちょっかいを掛けないように上下関係をきっちり叩き込んで置いてやる)

 エドワルドからのブリザードに、周りの会議出席者達は、身体を震わせ背に大量の汗を流している。

 そんな中、エドワルドと同じようなブリザードを発しながらも、周りに気付かれる事無く淡々と近況報告を付け加えるジーン。


「向こうの国は、凶作だったそうですよ。それを理由に、民が勝手にした事だと言い出しそうですね」


 ただし、周りには気付かれていないが、アレクシスはジーンのそれもきちんと感知している。

(恐い恐い恐い!!寒い寒い寒い!!今直ぐこの寒さをどうにかしろ!二人揃ってブリザードを発するな!エドワルドは兎も角、何故ジーン殿まで?!やるならやらかした相手に好きなだけ放出しろ!あの国王、覚えてろ!!この二人を怒らせた事を後悔させてやる!!)

 エドワルドとジーンはリラが楽しみにしていた侯爵領行きを無効にされた怒りを、アレクシスは巻き添えを食らった怒りを、この場にいない隣国の国王に向け、容赦無く、とことんその身に恐怖を植え付け知らしめる事を心の中で誓った。
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