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本編

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「まぁ、一度連れ帰って仕事をさせると、グラントの凄さは分かるよ。ジェフもね。万一クルルフォーン邸の使用人達が文句を言うようなら、仕事風景を見せてやれば良いよ。二人も、口を挟んで来る者がいれば、主人の負担を減らす事が出来ない使用人に口出しされる筋合いは無いと言ってやりなさい。未来の公爵夫人に心配を掛けさせるなとも」

「はい」

「了解です!」

「エドワルド殿は、もう少し回りに仕事を割り振るなり利用するなりしないと、結婚後もリラとの時間を多く取れずに、削られてしまう可能性が高くなるよ。この際エヴァンス家も協力するし、人材も派遣するから、クルルフォーン邸の使用人達も、ある程度出来る者に育てて行きなさい。放って置いても、エドワルド殿は最終確認するだけの状態までに仕上げられれば、その分リラといる時間が増えるのだから」


 ジーンのその言葉に、エドワルドは反応する。

 今までは、割り振りや育てるのに時間が掛かるのが嫌で、自分一人で処理していたが、それは独身で、一人の時間はいくらでもあったからだ。これから先、リラと暮らせば、当然その時間は二人の物。

(リラとの時間が少ないのは嫌だ!!これは早急に取り掛からなければ!家の雑務は勿論、政務の仕事もだが、家は兎も角、政務の方は、誰が何に適性しているのかを先ず調べないといけないな……)


「クルルフォーン邸での雑務の割り振りは、ジェフにも精査させれば良い。それと政務の方は大体私が把握しています。エドワルド殿が何を抱えているのか書き出して頂ければ、私が割り振りますよ。この際、仕事に手を抜いてる連中には、多い目に割り振ってやりましょう。今まで楽をしていた付けを払って貰えば良いんです。ああ、それと、エドワルド殿には、政務官達の弱味や、取り引き材料もお教えしますよ。ここぞと言う時に、有効に使って下さい」


 ジーンの提案は、とても嬉しい物ではあるが、エドワルドは、それに対する対価を思い付かない。ここは、ジーン本人に直接聞く事にする。


「私はそれに対し、何を差し出せば良いですか?」


 その言葉にジーンが答える。


「何も。えて言うなら、その時間でリラを幸せにしてくれれば良い。新婚早々、リラに寂しい思いをさせたくは無いからね。兄として出来る事が有るなら、するべきだと思っただけだよ。リラにも、貴方にもね。リラの夫になるんだから、弟らしく頼って構わないよ。ただし、それが夫婦喧嘩の場合は当然、私はリラの味方に付くけどね」
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