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本編

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 リラの部屋だと大勢が集まり過ぎなので、広めの部屋に移り、侍女達も交えて楽しく選んでいれば、時間が経つのは早い物で、夕方になり、ジーンが帰って来た。


「リラ、ただいま。楽しそうだね」

「ジーン兄様お帰りなさいませ!今、マッド達のドレスのデザインを選んでいた所です。今回もクレアを中心に、侍女達が張り切って作ってくれるそうですわ。出来上がりが楽しみです」


 クレアはリラより少し上の侍女で、特に小物や服飾関連に詳しく、リラにも時折手作りの衣服や小物を作ってくれる侍女だ。ダンと共に領内を歩く時にとても重宝する服等は、店で売っていてもおかしくない出来映えだ。

 そんなクレアに彼女達のドレスを頼む。ドレスはマッドに作ったのが初めてだったが、それとて、とても良い出来映えだった。


「普段使っていた生地とまるで違うので、多少の不安はありましたが、思いの外、美しく仕上がったので良かったです」

「クレア、わたくしにもドレスを作って?仕立て屋を呼ぶより、クレアのドレスが着たいわ。だって、わたくしの好みもクレアの方が詳しいもの。ね?良いでしょ?」


 そう言って、クレアに作って貰ったドレスを、時折夜会でも着るのだ。そして、それがどこで仕立てたのか気になった婦人達は、リリーに質問して来るのだが、リリーは笑顔で答える。


「リラの秘密の専属だから、お教え出来ないのよ。その仕立て人も、元々は小物作り専門だったから、ドレスは専門外なのを無理を言って作って貰っているようなものなの。だから、他の人のまでは作れないと思うわ、ごめんなさいね」


 侍女とは言わず、謎の仕立て人と印象付けて、クレアの評判は社交界で上がる一方だ。

 そんなクレアのドレスがマッド達に作られている等、世の婦人方は思いも寄らない事だろう。マッド達は、知らずに社交界でも評判のドレスを身に付けていたのだ。


「エドワルド殿も、もう直ぐ来るだろうから、リラはお迎えの準備をね」

「はい。着替えて参りますわね。レベッカ、部屋に戻って着替えるわ。準備を宜しく。皆様、わたくしはこれで失礼しますわ。クレア、後は宜しくね」

「「はい。かしこまりました」」


 レベッカはリラと同行し、クレアはマッド達の要望を取り入れながら、話を詰めていく。

 そしてリラは食後に果実酒を嗜み、笑顔全開、本音全開で、エドワルドを更に虜にして寝落ちした。
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