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本編

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 嫌だ何だと大声で喚く声や、野太い男達の声、暴れているだろう物音が、ダンの通る扉の向こう側から聴こえるが、ジーンもエドワルドも気にしない。

 扉が閉まる事で、音の音量が一気に下がり、絶叫のような悲鳴だけがなんとか届く程度で、その言葉までは拾えない。

 この部屋を出れば、物音一つ聴こえない為、中で何が催されているのかなんて誰も想像しないだろう。

 マッドがこちらに用事がある場合、寝室側にある、扉の金属部分に物を投げろと言ってあるので、その音がすれば、ダンが扉を開け、用件を聞く手筈だ。


「さて、我々はここで、逃げようの無い部屋からの逃走を阻止する為に、明日の朝王宮が通常の状態に戻ってから、エドワルド殿に王宮へと向かって貰います。どうせ王宮主催の夜会で皆、疲れているでしょうから、ゆっくりで構いませんよ」

「ジーン殿、坑夫にすると言いましたが、それで良いのですか?」

「ああ、処刑しないのかと言う意味ですか?処刑なんて、生温い事はしませんよ」

「生温い……ですか?」


 ジーンがダンに視線を向ける。元々の発案はダンだからだ。


「お貴族様ってのは処刑が好きなのかねぇ。処刑なんて、刑が執行されりゃあ、それまででしょ」

「好きと言うより、合理的だからじゃないか?刑が執行されれば死ぬからな」

「死んだらそれまででしょう。痛みも苦しみも感じない。そりゃあ牢でのうのうと生きてられんのも腹が立ちますが、そもそも何でそんな奴等を牢屋に入れっぱなしにするんですか?働かせりゃあ良いんですよ。今まで散々平民を馬鹿にしといて、その金で生きてんですよ?なら、自分で自分の食い扶持ぐらい稼がせて、それ以外の金は全部国に返金させりゃあ良いんです。貴族のボンボンが国賊として坑山に送られ、平民と蔑む坑夫に濃き使われ、逃げ出そうにも枷があり、十中八九、夜は男達の慰み者になる生活が死ぬまで続くんだ。処刑されて死んだ方が誰だってマシだと思うだろうよ。しかも、事故で死んだ所で誰も困らない。何せ国賊だからな。ジーン坊っちゃんや公爵様は、処刑せずにいる事で、逆に寛容だと思う馬鹿もいるだろうよ。坑山がどんな場所か知らないだろう貴族にはな」

「私も父も、これを聞いた時に、ああ、成程なと思ったよ。だから私の父は、前国王陛下が国王在任中に話を持ち掛け、処刑の次に当たる刑罰に書き加えている。あたかもそちらの方が軽い刑罰だと思わせる為に」


 エドワルドは納得した。確かにその方が、より罪人に効果的だと。同時にジーンが“生温い”と言った意味も理解した。
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